借金350万円は債務整理できる?任意整理や個人再生・自己破産の選択方法と注意点

今回は、「借金350万円が返せなくなった場合」の対処法と注意点について解説します。

消費者金融・銀行カードローンからの借金のような無担保の借金を350万円も抱えている場合は、かなり深刻な状況といえます。

毎月の返済額も10万円近くになっていることも多く、返済日が近づく度に精神的に追い詰められてしまう人も多いと思います。

高額な返済が毎月続けば、ちょっとしたトラブルですぐに返済が行き詰まってしまいます。

借金350万円は、毎月の利息も4万円以上となるため、1度返済に行き詰まると自力で完済することは難しい場合も少なくないでしょう。

借金が返せないことで、「夜逃げ」や「自殺」を考えている人もいるかもしれません。

しかし、自力では借金を返せない場合でも「債務整理」をすれば、借金問題を解決することができます。

借金のために自殺する必要はありません。

また、夜逃げで解決することはあまりにもリスクが高すぎます。

350万円の借金を抱えているときでも、毎月3万円程度の返済を続けることができれば、自己破産せずに借金問題を解決できる可能性があります。

また、大切なことなので最初に結論からお伝えします。

『1年以上、借金の返済総額が減っていないor増えている。』

『このまま借金を完済するのは厳しいのは分かっているけど、利息だけ毎月支払うような状態が1年以上続いている。』

このような状態になっている方は、既に黄色信号が点滅している状態です。

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それでは解説をしていきます。

債務整理の種類

債務整理には、「任意整理」、「特定調停」、「個人再生」、「自己破産」の4つの方法があります。

借金350万円が返せないときには、収入や保有財産の状況によって、これらの手続きから最善の方法を選択して借金問題を解決します。

任意整理をすれば今後の利息負担がなくなる

任意整理は、手続きが簡単で費用も安く済むため、借金問題を抱えた多くの人に利用されている解決方法です。

任意整理は、裁判所を用いずに債権者と私的に話し合いをして「利息の免除」と「分割払いのやり直し」をお願いする方法です。

借金は「利息の負担がなくなる」だけで返済が可能となることも少なくありません。

また、過去の延滞で「期限の利益」(分割払いする権利)を失っている場合でも、任意整理に応じてもらえれば期限の利益が回復されるのが通常です。

個人再生では「借金が一部免除」される

「自己破産するしかない」と思うような多額の借金があるときでも、個人再生を利用できれば、自己破産せずに借金を解決することができます。

個人再生が認められれば「借金の一部」を免除してもらうことができるからです。

たとえば、借金350万円は最大で250万円が免除してもらえる可能性があります。

また、住宅ローンを抱えているとき(住宅ローンの返済が難しくなったとき)には、個人再生にいわゆる「住宅ローン特則」を適用することで、住宅ローン返済負担を軽減することも可能です(住宅ローン特則付き個人再生)。

なお、「住宅ローン特則」については以下の記事で詳しく解説しています。

自己破産すると「すべての返済義務を免除」してもらえる

自己破産は、任意整理・個人再生を利用しても借金を完済できないときに用いる最終的な救済手続きです。

自己破産をすれば、一定の財産の処分と引き替えに、すべての借金の返済義務を免除してもらえます(免責)。

ただし、財産隠匿がある場合や、裁判所・破産管財人の職務遂行に協力しなかったときなどには、免責が認められない場合もあります。

免責不許可となったときには、返済義務は免除されないので、強制的に財産を処分させられただけになってしまいます。

借金を全く返せないときには「自己破産」

自己破産は、債務整理の方法のなかで、唯一「今後の分割弁済」のない方法です。

したがって、「分割返済するだけの収入がない(足りない)」ときでも、自己破産すれば、借金問題をきれいに解決することができます。

財産を全く持っていない人であれば、1円も返済する必要なしに借金の返済義務をすべて免除してもらうことが可能です。

ただし、一定の財産をもっているときには、生活に必要な家具・家電を除いた「99万円分を超える財産」は失うことになります。

あまり使われない特定調停

特定調停は、「裁判所で行う任意整理」といえる手続きです。

裁判所に特定調停を申し立てると「借金を分割で返済するための話し合い」を調停委員に仲介してもらえます。

調停委員が間に入ってくれるので、弁護士や司法書士に依頼しなくても債務者本人だけで債務整理を行える可能性があります。

しかし、次のような理由から、最近では特定調停の利用は減ってきています。

・和解の締結を強制できない
・担当する調停委員の力量に左右されることが多い
・任意整理よりも返済総額が多くなることが多い
・任意整理よりも返済期間が短くなることが多い
・調停成立後に返済を延滞すると強制執行されてしまう


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借金350万円を任意整理で解決する場合

任意整理が成功すれば、「将来の利息」は免除してもらえます。

したがって、借金350万円は、任意整理で合意された返済回数の頭割りの金額を毎月支払うことで「完済する」ことができます。

「利息しか免除されないのか」とがっかりする人もいるかもしれませんが、350万円の利息があるときの毎月の利息はかなり高額です。

たとえば、年15%の利息で350万円を借金しているときの「1ヶ月の利息は43,750円」です。

年18%(50万円×7社)の場合だと月52,500円の利息になります。

年15%で借りた350万円を約定返済(契約通りの内容で完済)したときに支払う利息の総額は、200万円を超えることがほとんどです。

借金が高額なときには、利息が免除されるだけでも支払総額をかなり減らすことが可能です。

借金350万円を任意整理したときの毎月の返済額

任意整理の多くは、3年(36回)から5年(60回)の分割払いを条件とするのが一般的です。

毎月以下の金額を支払えるのであれば、350万円の借金を任意整理で解決できます。

・3年の任意整理では、毎月97,222円
・5年の任意整理では、毎月58,333円

借金350万円があるときの約定返済額は、毎月7万円から10万円ほどです。

借金350万円はかなり多額の借金です。

そのため、任意整理では「借金(元金)が減額されない」ため「毎月の返済額ベース」では負担が軽くならない場合も多いかもしれません。

しかし、約定返済では、「6年以上の返済期間をかけて200万円以上の利息を支払う」必要があります。

任意整理が失敗する場合

任意整理はあくまでも「私的な交渉(裁判外の和解)」に過ぎません。そのため、債権者が和解に応じてくれなければ任意整理は成立しません。

たとえば、次のようなときには、債権者が任意整理に応じてくれないことも少なくありません。

・借金してからほとんど返済していない場合
・債権者からの信頼を失っている場合
・すでに債権者が訴訟などの法的措置を講じている場合

特に350万円の借金の任意整理に応じることは、債権者にとっては「200万円以上の利息」を失う行為です。

したがって、任意整理までの間に利息を全く支払っていないようなケースでは、任意整理に応じてもらえることは難しい場合が多いです。

また、350万円の分割返済は長期間に及ぶため、「債権者からの信頼」がないときにも成立は難しいといえるでしょう。

中小の消費者金融からの借金があるときには、5年の分割払いには応じてもらえないことも少なくありません。

中小の金融機関には無利子の5年返済を待てるだけの体力がないこともあるからです。

さらに、債権者がすでに訴訟提起・支払督促といった法的手段を講じているときにも任意整理は難しい場合が少なくありません。

これらの問題は、延滞の長期化といったように、借金を放置するほど生じやすくなります。

任意整理で解決するためには、「早期着手」がとても大切なのです。

借金350万円を個人再生で解決する場合

個人再生は、裁判所に認可された「再生計画」に基づいて借金の一部を返済することで、借金の残額を免除してもらえる手続きです。

「再生計画」に基づいて返済する借金(計画返済総額)を定める基準には、次の3つがあります。

・最低弁済基準額
・清算価値
・法定可処分所得の2年分(給与所得者等再生の場合のみ適用)

再生計画は、上記の基準で算出される金額よりも高い金額を原則3年(特段の事情があるときは5年)で返済するものでなければなりません。

なお、上記のうち「法定可処分所得の2年分」の基準は、「給与所得者等再生」という個人再生の場合にのみ適用される基準です。

個人再生の9割以上は「小規模個人再生」という方法で行われるので、法定可処分所得の2年分が問題となることはあまりありません。

借金350万円の最低弁済基準額

「最低弁済基準額」とは、民事再生法231条2項に定められている金額のことです。

借金350万円の「最低弁済基準額」は、「100万円」です(民事再生法231条2項4号)。

個人再生の計画返済は、原則3年間、3ヶ月に1度以上の頻度でなされる必要があります。

「3ヶ月に1回の頻度」であれば、自営業者や歩合制給料のように、収入変動が大きい人でも対応しやすいといえます。

なお、計画返済の期間は原則3年ですが、収入が足りない特段の事情があるときには、返済期間を最大5年とすることを認めてもらえる場合があります。

借金減額の上で5年の分割を認めてもらえれば、かなりの人が自己破産せずに借金350万円を解決できるのではないでしょうか。

返済の頻度 3年の計画返済 5年の計画返済
毎月払いの場合 27,777円 16,667円
2ヶ月に1回返済する場合 55,555円(18回払い) 33,333円(30回払い)
3ヶ月に1回返済する場合 83,333円(12回払い) 5万円(20回払い)

個人再生における清算価値

「清算価値」とは、債務者が「個人再生の時点で自己破産した場合に債権者に配当される金額」のことをいいます。

個人再生では、清算価値を超える金額を債権者に分割返済しなければなりません。

自己破産した場合よりも不利な条件(借金の減額)を債権者に強いることは公平ではないからです。

清算価値に計上される財産は「自己破産すると差押えられる財産」です。

具体例としては、次の財産が挙げられます。

・ローン完済済みもしくはアンダーローンの保有不動産(ローン残債を引いた評価額)
・現金のうち99万円を超える金額
・20万円を超える預貯金(全額・全口座合算)
・20万円を超える生命保険・学資保険などの解約返戻金(全額)
・20万円を超える自動車(評価額)
・退職金(支給見込み額)(在職中であれば支給見込み額の1/8が20万円を超えるとき)

たとえば、個人再生の時点で退職すれば「1,000万円の退職金を支払ってもらえる」場合であれば、その1/8は「125万円」です。

したがって、最低弁済基準額の100万円を超えるため、「125万円以上を返済する再生計画」を定める必要があります。

特に、中高年の人の場合には、「マイホームがアンダーローンになる場合」や、「退職金見込み額」・「解約返戻金」によって「清算価値が高くなる場合」があることに注意が必要です。

多くの弁護士・司法書士事務所では、相談の際に「清算価値」の試算にも対応してくれます。

心配な場合には、予め相談してみると良いでしょう。

借金250万円を自己破産で解決する方法

個人再生を利用することができれば、借金350万円でも自己破産せずに解決できる場合が多いといえます。

しかし、会社都合のリストラに遭い、再就職の見込みがない場合や、病気やケガを抱えているときなどには、分割返済すら不可能という場合もあるかもしれません。

自己破産は「借金を全く返せないとき」の救済手段です。

自己破産をして破産免責を受ければ、今後の分割返済を一切せずに、借金の残額すべての返済義務が免除されます。

自己破産すると失ってしまう財産

自己破産は、将来の分割返済をしないかわりに、「自己破産の時点で保有している財産」を処分する必要があります。

自己破産したときに処分する必要が生じる財産の例は次のとおりです。

・不動産
・処分価値のある自動車
・保有する現金のうち99万円の分
・20万円を超える預貯金・解約返戻金の全額(全口座(保険)合算)
・退職金(支給見込み額)(在職中であれば退職金支給見込み額の1/8の額)

なお、自己破産した場合でも、生活に必要な家具・家電(ベッド・たんす・テレビ・冷蔵庫など)は、差し押さえられません。

また、退職金や解約返戻金が差押えられるときでも、差押え相当額を債務者が積み立てることで、差押えを回避することが可能です。

自己破産したときに上記の財産がない場合には、「同時廃止」という簡易な手続きが採用されます。

同時廃止になれば、破産管財人を選任する必要もないため、裁判所に納める費用も数万円程度で済みます。

自己破産する際に注意すべきこと

自己破産は「借金のすべてを免除してもらう」ために申し立てるものです。

しかし、「自己破産しただけ」では、借金の返済義務が免除されないことに注意する必要があります。

借金の返済義務を免除してもらうためには、自己破産後に開かれる「免責手続き」で免責を認めてもらわなければなりません。

破産法252条1項は、債務者が一定の事由に該当するときには「免責不許可」にすることを定めています。免責不許可事由の例は次のとおりです。

・財産を隠匿する行為
・財産を不当に減少させる行為
・不当な負債の引き受け(クレジットカードの現金化)
・特定の債権者にだけ不公平に弁済する行為
・浪費やギャンブルで多額の借金を抱えた場合
・破産手続きに協力しないこと

免責不許可事由に該当する場合でも諦める必要はありません。

「裁判所の裁量」で免責を認めてもらえることが可能だからです(破産法252条2項)。

実際の自己破産のケースでも、免責不許可事由に該当している多くの人が裁量免責を得ています。

ただし、裁量免責を得るためには、破産管財人による調査を経る必要があります。

免責不許可事由があるときには、「財産が全くない場合」であっても破産管財人を選任する必要があります。

そのため、最低でも「20万円以上の予納金」が必要となります。

東京地方裁判所では予納金の分納に応じてくれますが、他の裁判所では分納ができない場合もあります。

裁判所は「自己破産申立前」に生じた免責不許可事由には比較的寛大です。

しかし、最近では「自己破産申立後(直前)」に問題がある行為をしたときには、厳しく対応する裁判所が増えています。

特に、財産隠匿や、破産手続きへの非協力、免責審尋・債権者集会の欠席といったことがあると免責不許可となる可能性はかなり高くなります。

免責を確実に得るためにも、弁護士・裁判所・破産管財人の指示には絶対に従いましょう。

まとめ

借金350万円の返済に行き詰まってしまったときには、絶望してしまうことも少なくないと思います。

また、何とか返済を続けているけど「毎月かなりしんどい」という人も多いのではないでしょうか。

毎月7万円~10万円の返済を5年以上続けることはとても大変です。

債務整理すれば、借金350万円も毎月2万円から6万円程度の分割返済で解決できる場合があります。

債務整理をすれば、200万円以上の利息が免除されるからです。

また、債務整理を弁護士・司法書士に依頼すれば、「債権者からの取立て」が一切なくなります。

静かな普段通りの生活を取り戻すことで、生活を建て直す環境も整えることができます。

借金350万円の完済が難しいと感じたときには、できるだけ早く弁護士・司法書士に相談することをおすすめします。

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借金問題は相談がしにくいため、自分1人だけで抱え込んでしまう方は非常に多いです。
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