JA職員の債務整理の方法~任意整理、個人再生、自己破産、過払い金請求の選択肢

平成30年9月、岐阜県中津川市の東美濃農業協同組合(JAひがしみの)の40代男性職員が、顧客1人から預かった定期積み金など約214万円を着服したり、約1140万円を一時流用したりしていたことが発覚したというニュースがありました。

JA職員200万円超着服1千万円一時流用も「パチンコなどに使った」岐阜

報道からは、この男性職員が約1140万円を何に一時流用していたか分かりません。

しかし、借金をしていて、返済のため、人から預かったお金を流用してしまったという事件もよく見聞きします。

人から預かったお金を流用した場合、横領罪で刑事責任を問われることもあります。

もし、借金が膨らんでしまったとしても、早い段階で債務整理をしていれば、そのような最悪の事態は避けられたというケースがほとんどです。

ところが、JA職員の人は「債務整理をすると、勤務先に知られ、安定した仕事を失うことになるのではないか」など不安に思い、債務整理をすることを躊躇してしまっているのではないでしょうか。

JA職員の人も、勤務先に知られることなく債務整理をすることは可能です。

そこで、この記事では、JA職員の債務整理の4つのポイントについて詳しく解説します。

また、大切なことなので最初に結論からお伝えします。

『1年以上、借金の返済総額が減っていないor増えている。』

『このまま借金を完済するのは厳しいのは分かっているけど、利息だけ毎月支払うような状態が1年以上続いている。』

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それでは解説をしていきます。

債務整理の種類

債務整理とは、借金を整理し、無理なく返済をすることができるようにするための手続きをいいます。

一口に債務整理といっても、いくつかの種類があります。

そこで、JA職員の債務整理のポイントと注意点を説明する前に、一般的によく使われる任意整理、破産、個人再生の3つについて、それぞれどのような手続きか見ていきましょう。

任意整理とは

任意整理とは、裁判所を介さず、直接貸金業者などと交渉し、利息や遅延損害金の支払いを免除してもらった上で、毎月の返済額も減額してもらい、借金そのもの(元本)を3年から5年で返済する内容の合意を締結する手続きです。

他の2つの手続きと比較した主なメリットは、①手続きが速くて簡単であること、②財産を残せること、③家族や勤務先などに知られることなく行えることにあります。

破産とは

破産とは、裁判所に申立てをして、破産者の財産を処分してお金に換え、これを債権者への返済に充て、それでも残った借金をゼロにするという手続きです。

破産の主なデメリットは、財産を処分しなければならないこと、資格制限・職業制限を受けることにあるでしょう。

なお、破産の場合、裁判所に手続きの申立てをすると、国が発行するいわば新聞である「官報」に氏名、住所が掲載されることになっています。

個人再生とは

個人再生とは、裁判所に申立てをして、借金の一部を免除してもらい、残った借金を3年(特別な事情がある場合、5年間まで返済期間を延ばすことができます)かけて分割で返済する手続きです。

個人再生も、破産と同じく、裁判所に手続きの申立てをすると、「官報」に氏名、住所が掲載されます。


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JA職員の債務整理の4つのポイントと注意点

続いて、JA職員の債務整理の4つのポイントと注意点について解説していきます。

債務整理をしたことは勤務先に知られる?

債務整理を考えているJA職員の人の最大の不安は、債務整理をしたことが勤務先に知られてしまうのかということではないでしょうか。

この疑問については、裁判所を介する手続きか否かで結論が異なります。

それぞれ見ていきましょう。

任意整理の場合は?

まず、任意整理の場合、債権者と直接交渉するだけですから、秘密裏に手続きを行うことが可能です。

基本的に勤務先に知られることはありません。

破産と個人再生の場合は?

他方で、破産と個人再生の場合、結論から言うと、勤務先に知られてしまう可能性は高いです。

先に説明したとおり、破産や個人再生をすると、住所、氏名が官報に掲載されます。

しかしながら、破産や個人再生をしたことが勤務先に知られるのは、基本的に官報からではありません。

仕事で必要でもない限り、官報に目を通している人というのはほとんどいないからです。

破産や個人再生をしたことが勤務先に知られてしまうのには、以下2つのケースが考えられます。

・手続きに必要な書類を勤務先に用意してもらわなければならない場合

破産や個人再生の場合、裁判所から勤務先の協力がないと得られない書類の提出を求められます。

例えば、給与明細、源泉徴収票、退職金の見込額証明書などです。

給与明細や源泉徴収票は、既に手元にあればよいでしょう。

しかし、退職金の見込額証明書は、破産や個人再生を裁判所に申し立てる時点で勤務先を退職した場合の金額を分かるようにするためのものです。

そのため、勤務先に作成してもらわなければならないことになるでしょう。

・JAから借入れをしている場合

JA職員の人は、JAから借入れをしていることが多いでしょう。

JAは、信用事業として、住宅ローン、マイカーローン、教育ローンなど、様々なローンを取り扱っています。

破産や個人再生をする場合、すべての債権者を平等に扱わなければならないという債権者平等の原則があります。

そうすると、破産や個人再生をする以上、JAを債権者として裁判所に申告しなければなりません。

JAだけ債権者として申告せず、返済を続けるということはできないのです。

裁判所に申告すると、裁判所は、JAに対して通知をしますので、破産や個人再生をすることが知られてしまうのは避けられないでしょう。

このように破産や個人再生をした場合、勤務先に知られてしまう可能性は高いと言えます。

「クビ」にはならない

それでは、破産や個人再生をしたことが勤務先に知られた場合、それを理由にいわゆる「クビ」になってしまうことがあるのでしょうか。

結論から言うと、基本的に破産や個人再生をしたことを理由としてクビになることはありません。

というのも、労働契約法上、使用者は、合理的な理由がない限り、労働者を解雇することはできないとされています。

そして、破産や個人再生をしたという私生活の事柄を理由に労働者を解雇することは、合理的な理由がないと判断されるのが一般的です。

したがって、破産や個人再生をしたとしても、クビになることは考えにくいでしょう。

任意整理がオススメ

破産や個人再生をしたことを理由としてクビにならないとしても、勤務先に知られて居心地が悪いことは間違いありません。

そのため、先に説明したとおり、JA職員の人が債務整理を考える場合、任意整理を選ぶのがよいでしょう。

もっとも、一般的に、毎月の返済額の合計が手取り収入から住居費を差し引いた額の3分の1を超えるようであれば任意整理は困難です。

JA職員の人は、「ノルマ自爆」があると言われています。

ノルマ自爆とは、JAが共済事業として行っている共済への加入や農業新聞の定期購読の契約などのノルマが課され、これが達成できない場合、自分で共済に加入したり、契約をしたりすることです。

こうした共済の掛け金の支払いなどで生活費が圧迫されると、借入れで賄ったり、クレジットカードを利用して支払ったりするようになり、次第に借金が膨らんでいきます。

そのような状況になってしまっていると、もはや任意整理では借金を整理できないことがあるのです。

任意整理ができない場合は?

任意整理では借金を整理できない場合、破産か個人再生をせざるを得ないでしょう。

破産と個人再生のいずれを選択するかについては、分かりやすくするため、大雑把に言うと、処分したくない財産がある場合は個人再生を、そのような財産はない場合は破産を選択するのが通常です。

処分したくない財産としては自宅が考えられます。

個人再生を選択すれば、自宅を処分しなくて済むのです。

ところで、先に説明したとおり、破産をした場合のデメリットとして、職業制限や資格制限を受けることが挙げられます。

職業制限を受ける身近な職業としては、警備員(警備業法第14条)、生命保険募集人及び損害保険代理店(保険業法第279条)などがあります。

資格制限を受けるのは、弁護士(弁護士法7条5号)、税理士(税理士法4条3号)、公認会計士(公認会計士法4条5号)などです。

JA職員の人は、JAが共済事業として行っている共済への加入を勧誘します。

そのため、生命保険募集人及び損害保険代理店(保険業法第279条)に当たり、破産をすると職業制限を受けるのでは?という疑問が生じます。

しかしながら、JAが行っている共済事業は、農業協同組合法によって定められており、保険業法の適用は受けません。

そのため、破産をしたからといって、共済への加入の勧誘をできなくなるわけではあないのです。

したがって、処分したくない財産がないような場合、最終的に破産を選択することも不可能ではありません。

まとめ


以上、JA職員の債務整理の4つのポイントについて解説しました。

説明したとおり、JA職員の人も債務整理をすることは可能です。

しかしながら、借金が膨らめば膨らむほど選択肢が少なくなります。

人のお金を預かることの多いJA職員の人は、誘惑を受けやすいでしょう。

しかしながら、一度でも人から預かったお金を流用すると、横領となり、刑事罰を受ける可能性もあります。

そのような事態に至らないためにも、一日も早く弁護士などの法律の専門家に相談することをお勧めします。

以上

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