世界的にキャッシュレス化が進み、日本もそれに追随しようとしている今日、クレジットカードが一切使えないというのは非常に不便ですよね。
この記事をご覧の方は、債務整理を考えているものの、債務整理をしたらクレジットカードが一切使えなくなるのか?という疑問をお持ちなのではないでしょうか。
実は、この疑問に対する回答は、債務整理の方法によっても少し異なってきます。
そこで、この記事では、この疑問に対する回答を債務整理の方法によって分けて解説していきます。
また、大切なことなので最初に結論からお伝えします。
『1年以上、借金の返済総額が減っていないor増えている。』
『このまま借金を完済するのは厳しいのは分かっているけど、利息だけ毎月支払うような状態が1年以上続いている。』
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それでは解説をしていきます。
個人再生・破産の場合
個人再生・破産とは
債務整理の方法は、裁判所を介する手続きと裁判所を介さない手続きとに分かれます。
裁判所を介する手続きで主なものが個人再生と破産です。
個人再生は、裁判所に申立てをして、借金の一部を免除してもらい、残った借金を原則として3年(例外的に5年)で分割返済する手続きです。
また、破産は、裁判所に申立てをして、債務者の財産を処分してお金に換え、これを債権者への返済に充て、それでも残った借金をゼロにするという手続きをいいます。
個人再生・破産の手続きをする前に持っていたクレジットカードはどうなる?
この個人再生と破産ですが、「債権者平等の原則」という考えに基づき、すべての債権者を平等に扱わなければならないとされています。
つまり、特定の債権者からの借金については手続きの対象とせず、一部免除ないし免除してもらわないということはできません。
そのため、個人再生や破産を申し立てる時点でキャッシングないしショッピングの利用残高のあるクレジットカードについては、手続きの対象としなければなりません。
そうすると、クレジットカードを作ったものの使用しておらず、個人再生や破産を申し立てる時点で利用残高のないクレジットカードについては手続きの対象とならず、使用できるかというとそうではありません。
通常、個人再生や破産の手続きは、弁護士などの法律の専門家に依頼するものですが、弁護士などは、依頼を受けた後、新たな借金をすることを禁じます。
なぜかというと、弁護士などに個人再生や破産の手続きを依頼しているということは、これ以上返済することができないことが分かっていたということです。
それにもかかわらず、新たな借金をしたことは、個人再生や破産の手続きを成功させる際の障壁となりかねません。
そこで、依頼を受けた弁護士などは、利用残高のないクレジットカードも含め、すべてのクレジットカード、ローンカードなどを預かるのが通常です。
そのため、個人再生や破産の手続きをすると、事実上、クレジットカードは使えなくなります。
個人再生・破産の手続き後にクレジットカードは作れる?
では、個人再生・破産の手続き後にクレジットカードは作れるのでしょうか?
結論から言うと、最長で10年間、短くても5年間は基本的にクレジットカードが作れないと考えてください。
以下ではその理由を説明します。
「ブラックリストに載る」という言葉を聞いたことがある人が多いのではないでしょうか。
実は「ブラックリスト」というものは存在しません。
日本には、経済産業大臣に指定された個人に関する信用情報機関が3つ存在します。
この信用情報機関は、個人の信用情報を管理しています。
信用情報とは、クレジットやローンなどの信用取引に関する契約内容や返済・支払状況・利用残高などの客観的取引事実を表す情報をいいます。
そして、新たにクレジットカードを作ったり、消費者金融から借金をしたりしようとする際、クレジットカード会社や消費者金融は、信用力を判断するための参考情報として信用情報を確認しています。
個人再生や破産をしたことは信用力を判断するために重要な情報ですから、これらの手続きをとると当然にその事実が登録されます。
このように、信用情報機関の管理する情報として信用力に疑問を抱かせる事実が登録されている状況が「ブラックリストに載る」と呼ばれているのです。
そして、個人再生や破産をしたことは、最長で10年間、短くても5年間は信用情報として載り、信用能力のない状態となります。
そのため、その間は、新たにクレジットカードを作ることは基本的に難しいでしょう。
任意整理の場合
任意整理とは
任意整理は、債務整理のうち、裁判所を介さない手続きです。
直接債権者と交渉し、利息や遅延損害金を免除してもらった上で、毎月の返済額も減額してもらい、残債務を3年から5年の分割払いで返済する内容の合意を締結します。
任意整理の手続きをする前に持っていたクレジットカードはどうなる?
任意整理の場合、裁判所を介さない手続きですから、特定の債権者とだけ交渉をし、合意をすることが可能です。
そのため、今後も利用したいクレジットカードについては、任意整理の対象としないということも考えられます。
では、任意整理の対象としなかったクレジットカードはこれまでどおり使えるのでしょうか?
途上与信について
結論から言うと、任意整理の対象としなかったクレジットカードもこれまでどおり使えるとは限りません。
なぜかというと、クレジットカードの会員規約には、「個人信用情報機関に登録された会員の個人情報により、会員の信用状態が悪化したことが判明したとき」は、カードの利用の停止、または会員の資格を喪失させることができるとされていることが一般的です。
そして、任意整理を行ったことは、信用情報として登録されてしまうのですが、信用力の審査は、クレジットカードを作成する際だけでなく、作成後もなされるからです。
このようにクレジットカード利用中に行われる信用力の審査を「途上与信」といいます。
そもそも、貸金業法上、貸金業者は、1か月に5万円以上の借入れをしており、借入残高が10万円以上ある人に対して、毎月、信用力の審査をしなければならないとされています。
また、借入残高が10万円以上ある場合、新たな借入れをしていなくても、3か月に一度、信用力の審査をしなければなりません。
このような信用力の審査は、「法定途上与信」と呼ばれています。
そして、クレジットカードでショッピングをした場合は貸金業法の規制の対象外ですが、キャッシング機能を利用した場合は貸金業法による規制の対象となります。
そのため、任意整理の対象としなかったクレジットカードのキャッシング機能を利用した場合、法定途上与信が行われることがあります。
さらに、クレジットカード会社は、法定途上与信とは別に、定期的に信用力の審査を行っています。
どれくらいの頻度で信用力の審査を行うかはクレジットカード会社によって異なりますが、少なくとも、クレジットカードの更新の際には行われます。
それ以外にも、何の手続きもしていないのに、クレジットカードの利用限度額が上がっているのを経験したことはありませんか?
これは、クレジットカード会社が途上与信を行った結果、より高い信用力があると判断したことによるのです。
こうして、クレジットカード会社が途上与信をした結果、任意整理をしたことが判明した場合、カード利用規約に沿ってカードの利用停止または会員資格喪失の手続きが取られます。
これにより、任意整理の対象としなかったクレジットカードも使えなくなってしまうのです。
例外もある!?
これまで説明してきたとおり、クレジットカード会社による途上与信の結果、任意整理の対象としなかったクレジットカードも使えなくなってしまうことが通常ですが、例外的なケースもあるようです。
というのも、任意整理の手続きをする前に使用したことがなかったり、利用残高がなかったりするクレジットカードについては、途上与信が行われても、これまでどおり使用できることがあります。
とはいえ、あくまでクレジットカード会社の判断に左右されることですから、基本的に、任意整理をすると、手続きの対象としていないクレジットカードも使用できなくなると認識しておいた方がよいでしょう。
任意整理の手続き後にクレジットカードは作れる?
それでは、任意整理の手続き後にクレジットカードは作れるのでしょうか?
これは個人再生や破産の手続きをした場合と同じく、最長で10年間、短くても5年間は基本的にクレジットカードが作れないと考えてください。
その理由は、個人再生や破産の場合と同じく、信用情報として任意整理をした事実が登録され、信用力がなくなっていることによります。
もっとも、審査基準の緩やかなクレジットカード会社によっては、任意整理の手続き後であってもクレジットカードが作れたという事例もあるようです。
とはいえ、これもあくまでクレジットカード会社の判断に左右されることですから、基本的に、任意整理をすると、最長で10年間、短くても5年間はクレジットカードが作れないと認識しておいた方がよいでしょう。
まとめ
以上、債務整理をした場合にクレジットカードが使用できるか、また、新たにクレジットカードを作れるかについて説明しました。
確かにクレジットカードが使用できなくなると不便ではあります。
もっとも、クレジットカードのように使うことができるデビットカードは作ることができます。
また、家族に家族カードを作ってもらうことも考えられます。
いずれにせよ、クレジットカードを使用できなくなることの弊害より、債務整理をしなければならない状況に陥っているにもかかわらず、これをしないことの弊害の方がはるかに大きいといえます。
そのため、クレジットカードの使用の可否を理由に債務整理を躊躇することなく、弁護士などの法律の専門家にご相談ください。
以上
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