「任意整理」は,債務整理の方法の1つです。
比較的チャレンジしやすい借金整理の方法として知っている人もいるかと思います。
ここでは,具体的な任意整理のメリット・デメリット,手続きの流れを,他の債務整理(自己破産,個人再生)との違いを踏まえながら説明していきます。
また、大切なことなので最初に結論からお伝えします。
『1年以上、借金の返済総額が減っていないor増えている。』
『このまま借金を完済するのは厳しいのは分かっているけど、利息だけ毎月支払うような状態が1年以上続いている。』
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それでは解説をしていきます。
任意整理とは
任意整理とは,債権者との直接の話し合いを通じて,借金の総額や返済方法などを新たに決め直す債務整理の方法をいいます。
具体的な内容を以下で説明します。
引き直し計算,過払い金返還請求
「引き直し計算」とは,各債権者から入手した取引履歴をもとに,取引開始時にさかのぼって,利息制限法の上限金利(15~20%)に金利を引き下げて再計算することをいいます。
引き直し計算によって,借金の額を確定します。
もし上限金利を超える金利で貸付が行われていた時期がある場合には,払いすぎた利息は過払い金として取り戻すことができます。
引き直し計算によって,過払い金の存在が明らかになった場合,任意整理の手続きの中で過払い金返還請求を行うことによって,借金が減額されることがあります。
利息のカット
任意整理においては,利息のカットを目指します。
これによって,借金支払いの負担が大きく軽減されるからです。
利息のカットには,“将来利息のカット”と“経過利息のカット”があります。
将来利息とは,任意整理によって債権者との間で新たな合意が成立(和解成立)してから借金を完済するまでの間に生じる利息のことをいいます。
他方,経過利息とは,債権者に対して受任通知を送付して借金の返済をストップしたときから債権者との間で新たな合意が成立するまでの間に発生する利息のことをいいます。
将来利息については,弁護士が交渉すればカットされることが多いのですが,経過利息のカットについては,応じてくれない業者もいます。
遅延損害金のカット
遅延損害金とは,返済期日までに借金を返済できなかったときに発生する損害賠償金のことをいいます。
遅延損害金の利率は,借金をする際の契約で決められており,多くの場合には,20%程という高めの率に定められています。
任意整理では,この遅延損害金についても,交渉によって多くの場合カットしてもらうことができます。
返済方法の変更
3年~5年程度で借金を完済できるような返済計画を立てて,分割の回数や支払い開始日などについて,各債権者と交渉します。
分割の回数を多くできれば,その分月々の返済の負担が少なくなります。
債権者と和解
引き直し計算,利息及び遅延損害金のカット,返済方法の変更の全てを債権者と交渉し,返済計画について合意がまとまると,和解成立です。
任意整理のメリット
周囲の人に債務整理したことがバレない
個人再生や自己破産であれば,手続きをとったことが国の機関紙である官報に掲載されるなどしますが,任意整理では,そのようなことはありません。
また,任意整理では,家族に協力してもらわなければ提出できない必要書類があるということも通常ありません。
また,弁護士に任せてしまえば,自分や家族が何かをしなければならないわけでもありません。
そのため,他の債務整理の種類と比較しても,周囲に知られる可能性は低いと言えます。
数ヶ月間、返済をしなくてよくなる
弁護士や司法書士から,債務整理を検討する旨の通知書(「受任通知」)を債権者に送ると,取立てが止まり,以降,一旦返済をしなくてよくなります。
債権者との交渉によって,和解後の支払い開始日を遅らせることができる場合もあります。
任意整理の対象とする債権者を選べる
個人再生や自己破産では,全ての借金を整理の対象としなければなりません。
つまり,保証人がついている借金や自動車ローン,住宅ローンなども対象にしなければならないのです。
そうすると,保証人に迷惑がかかったり,車や自宅を手放す必要が出てきたりします。
任意整理では,そのような借金は手続きから外すことができるので,保証人に迷惑をかけることを避けたり,手放したくない財産を持ち続けることができます。
任意整理の大きなメリットであるといえます。
借金の原因が浪費やギャンブルでも手続きできる
自己破産では,借金の原因が浪費やギャンブルなどの場合,免責許可がおりず,借金が免除されない可能性もあります。
しかし,任意整理では,借金の理由などは問われませんので,どのような理由で作った借金でも整理することができます。
任意整理のデメリット
ブラックリストに登録される
任意整理をすると,信⽤情報機関に登録されます。
このことを一般的に「ブラックリストに載る」と表現します。
これにより,5年間~10年間程度は新たな借り⼊れやクレジットカードの申し込みを断られる可能性が極めて高くなります。
借金が免除されるわけではない
自己破産では,基本的に,借金は全て免除されます。
また,個人再生では,ゼロにはなりませんが,大幅に減額されます。
しかし,任意整理は,返済していくことを前提とした債務整理の⽅法ですので,月々の負担は減っても返済自体は続けなければなりません。
(もっとも,引き直し計算により借金がゼロになる可能性はあります。)
希望した条件での和解ができない可能性もある
任意整理は,個人再生や自己破産とは異なり,裁判所を通さない手続きですので,強制力はありません。
債権者によっては,こちらが希望する条件で合意してくれないこともあるので,この点は注意が必要です。
任意整理の手続きの流れ
手続き全体は,以下のような流れで進みます。
裁判所などを介さない任意の手続きなので,かかる期間はまちまちですが,1カ月~6か月程度で終了することが多いといえます。
専門家に相談
まずは,専門家である弁護士(場合によっては司法書士)に相談してみましょう。
そもそも債務整理に踏み切るべきケースなのか,また,どのように進めるべきなのかを最初の段階で判断してもらうことができます。
受任通知の送付,返済ストップ
弁護士が各債権者に対して受任通知を発送します。
これにより,債権者からの取立てがストップし,返済も一旦ストップします。
取引履歴開示
各債権者から取引履歴が開示されます。
引き直し計算,過払い金返還請求
先に説明したように,開示された取引履歴をもとに,引き直し計算を行います。
過払い金がある場合には,過払い金返還請求をして,借金の額を確定します。
方針決定
ひとつ前のステップで確認された借金の総額を踏まえて,弁護士と相談して,債務整理のどの種類を選択するのか,月々いくらくらい返済するのかなど方針を決めます。
借金の額が多く,3年程度では返済することが困難であることが判明した場合には,任意整理以外の債務整理手続きを検討することになります。
債権者との交渉,和解
弁護士が,利息のカット,遅延損害金のカット,支払開始日,分割払いの回数などについて,各債権者と交渉します。
話し合いがまとまると,和解書を作成します。
和解内容に沿って返済開始
和解の内容に沿って,返済を開始します。
場合によっては,引き続き弁護士に依頼して,返済を代行してもらいます。
任意整理に適したケースとは
任意整理は,借金をちゃらにするものではなく,借金の返済を続けていく債務整理の方法です。
この任意整理の特徴から,借金の額がそれほど大きくなく,ある程度安定した収入がある人に,任意整理が適しています。
また,ある程度借金の額があっても,保証人に迷惑がかけられない,どうしても手放したくない財産にローンが残っているなど,整理する借金を自分で選択したいという事情がある場合には,任意整理を選択せざるを得ないケースもあります。
まとめ
以上みてきたように,任意整理には,デメリットもあり,また,借金がゼロになるような劇的な効果まではありません。
しかし,生活を大きく変えてしまうようなデメリットもありませんので,比較的手続きしやすい債務整理であるといってよいでしょう。
個々のケースによって,任意整理を選択すべきかどうかや,具体的な効果やデメリットは異なってきますので,まずは,専門家に相談してみることをおすすめします。
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