ろうきんの借金と債務整理~労金の任意整理・個人再生・自己破産3つの注意点

今回は、「ろうきん(労働金庫)」からの借金が返せなくなったときの注意点について解説します。

「ろうきん」は、通常の株式会社ではなく、労働組合や生協などの出資によって設立された「働く人のため」の非営利の金融機関です。

「ろうきん」は全国に13ありますが、それぞれが別々に組織運営をしています(いわゆる本店・支店の関係ではありません)。

このうち、最も大きな「ろうきん」は、関東1都7県(神奈川・埼玉・千葉・群馬・栃木・茨城・山梨)を営業エリアとしている「中央ろうきん」です。

「ろうきん」は、非営利の組織であることから、非常に低利率で融資を受けることができるのが最大の特徴です。

一般の金融機関と比べれば、年10%ほどの違いがあります。

そのため、「金利が安いから」と借りすぎてしまったり、他社からの借り換えのために「多額の融資を受ける」といった利用も少なくありません。

低金利の借金であっても、職場事情の減収・失職や病気などを理由に借金返済が行き詰まってしまうことはあり得ます。

特に、「ろうきん」の借金を債務整理する際には、個人再生・自己破産を念頭におくべきケースが少なくないのも特徴といえます。

また、大切なことなので最初に結論からお伝えします。

『1年以上、借金の返済総額が減っていないor増えている。』

『このまま借金を完済するのは厳しいのは分かっているけど、利息だけ毎月支払うような状態が1年以上続いている。』

このような状態になっている方は、既に黄色信号が点滅している状態です。

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それでは解説をしていきます。

債務整理の前に「ろうきん」に相談できる

「ろうきん」は「働く人のため」に設立された金融機関です。

そのため、職場事情で返済が困難になった場合には、他の金融機関に比べ、柔軟に対応してくれる可能性があります。

その制度のひとつが「勤労者生活支援特別融資制度」です。

この制度を利用すれば、次のような「返済条件の見直し」をすることができます。

制度の詳細については、下記リンク先も参照してください。

・返済額の減額 (毎月・ボーナスとも)
・元金据え置き(最長5年まで)
・返済条件の変更(毎月返済・ボーナス返済の残高割合の変更等)

「ろうきん」からの借金返済に困っているときには、まずは「ろうきん」に相談してみましょう。

生活応援融資制度(全国労働金庫協会ウェブサイト)


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「ろうきん」の借金を債務整理するときの注意点

「ろうきん」は、非営利の金融機関であることから、借金(融資)の内容も、一般的な消費者金融や銀行とは異なる点がいくつかあります。

そのため、債務整理をする際にも特に注意すべきポイントがあります。

「ろうきん」の借金を消滅時効で踏み倒すことは難しい

借金が返せなくなったときには、「消滅時効で踏み倒す」目的で返済を放置したり、「夜逃げ」を考える人もいるようです。

しかし、借金を消滅時効でチャラにする行為は、簡単に達成できるものではありません。まず、消滅時効を完成させることが簡単ではないからです。

「ろうきん」からの借金は、アコムや三菱UFJ銀行といった他の金融機関よりも消滅時効を完成させることが大変です。

非営利団体である「ろうきん」は、法律上の商人ではないため、消滅時効完成まで10年必要だからです(一般の金融機関は5年)。

そもそも、「ろうきん」が「返済されない借金を10年も放置しておくこと」はまずありません。

「ろうきん」は債務者の勤務先との結びつきが強いので、給料差押えのハードルが高くないからです。

なお、借金と消滅時効については、下記の記事でも詳しく解説しています。

「ろうきん」を債務整理すると勤務先に気づかれる

「ろうきん」から借金した場合には、「毎月の給料からの天引き」で返済することが一般的です。

口座振替、ATMでの振り込みで返済する一般の金融機関とは大きく異なります。

したがって、「ろうきん」の借金を債務整理すると、「ろうきん」から勤務先に「給料天引きを停止する」旨の通知が必ず送られます。

債務整理に着手した後は、個別に返済を受領するわけにはいかないからです(万が一「ろうきん」が天引き停止の通知をしないときには、債務者側で天引きを停止する措置を講じる必要があります)。

天引き停止の理由が債務整理であることまでを勤務先に知らせるかどうかは、それぞれの「ろうきん」の対応によって異なります。

勤務先と「ろうきん」とがどのような取り決めをしているかによって異なるからです。

債務整理を依頼した弁護士・司法書士から「ろうきん」に対して「理由を開示しないようにお願いする」ことは可能です。

ただ、「天引きの停止」があった以上は、「何かトラブルが起きたのかも知れない」と勤務先に詮索される可能性があることは否定できません。

「偏波弁済(へんぱべんさい)」に注意

「ろうきん」の借金を債務整理するときには、「給料天引き」との関係で「偏頗弁済」になりやすいことに注意が必要です。

「偏頗弁済」とは、特定の債権者だけ優遇して不公平な返済をすることです。

特に、弁護士・司法書士に債務整理を依頼した後(受任通知が送付された後)の偏頗弁済があると、個人再生・自己破産で不利な取扱いをうける可能性があります。

したがって、「ろうきん」の借金を債務整理する際には、「受任通知送付の時期」がとても重要です。

弁護士(司法書士)の指示にしたがい、正しく対応しましょう。

「ろうきん」の借金は任意整理しても効果が低い

「ろうきん」は非営利の金融機関であることから、とても安い利息で借金できることが大きな特徴です。

たとえば、団体会員の構成員(従業員)であれば、年5%台の利息で借り入れることができます(それ以外の人でも6~7%台)。

一般的な消費者金融・銀行カードローンの貸付利率は年15~18%なので、「ろうきん」の利息がいかに安いかがわかります。

しかし、貸付利率が低いということは、任意整理の効果も低くなることを意味しています。

任意整理の最大の効果は、「今後の利息が全額免除される」ことにあるからです。

たとえば、消費者金融から年18%で借り入れた借金が50万円あるときに、完済までに支払う利息は、「25万円以上」になります(毎月13,000円ずつ返済した場合)。

任意整理すれば、この25万円が免除されるため、毎月の返済額を大幅に減額できるのです。

しかし、「ろうきん」の借金の場合には、50万円の借金を完済するまでに支払う利息は、わずか7万円ほどにすぎません(年7%、毎月13,000円ずつの返済の場合)。

したがって、任意整理によって免除される支払額も少なくなってしまいます。

「ろうきん」からの借金残額がさほど多くない(免除額より任意整理の費用の方が高いとき)ときには、上で紹介した「勤労者生活支援特別融資制度」を活用した方がよい場合もあるでしょう。

「ろうきん」の借金は「借入額」が問題の場合が多い

「ろうきん」は低金利で融資をうけられるため、他の金融機関からの借金の「借り換え先」としてもよく知られています。

借り換え後に何かしらの事情で返済が行き詰まった場合には、個人再生・自己破産で解決すべき場合が多いと思われます。

「借り換え」や「借りすぎ」のように「借金が多すぎる」ことが問題の場合には、「借金(元金)を減額できない任意整理」では対応しきれないからです。

まとめ

「ろうきん」からの借金が返せなくなった場合は、職場都合による減収や病気の場合をのぞけば、「借金が多額過ぎる」ことが問題であることがほとんどといえます。

借金が多額過ぎるときには、債務整理のタイミング遅れれば、自己破産しか選択肢が残らない可能性も高くなります。

借金問題は、早期に対応することで、デメリットや費用を最小限に抑えることが可能です。

返済が苦しいと感じたときには、できるだけ早く弁護士・司法書士に相談しましょう。

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