今、借金をしている方、借金のことを家族に隠しているということはありませんか?
家族が死んだ後、消費者金融から督促状が届き、借金をしていたことが分かったというケースは少なくありません。
遺された家族としては、突然発覚した借金の存在に困惑してしまうことでしょう。
そこで、この記事では、借金をしていた人が死んだ場合に借金はどうなるのか、家族が借金を残して死んだ場合にどのような対応をとるべきかについて詳しく解説します。
また、非常に重要なことなので先に結論をお話します。
借金トラブルは時間がたてばそれだけ、対応が難しくなり事態はあっという間に深刻化していきます。
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借金をしていた人が死んだ場合に借金はどうなる?
借金をしていた人が死んだ場合、借金はどうなるのでしょうか?
借金がなくなるのではと期待しますよね。
結論から言って、借金をしていた人が死んだ場合、借金がなくなるわけではありません。
借金は「相続」されます。
ある人が死亡したとき、その人の財産を、特定の人が引き継ぐことを相続と言います。
相続について定めた民法では、死亡した人を「被相続人」と呼び、財産を引き継ぐ人を「相続人」と呼んでいます。
そして、相続人となった人は、被相続人のプラスの財産だけでなく、マイナスの財産も引き継ぐことになります。
つまり、故人に借金があった場合に相続をしてしまうと、相続人が借金を返済しなければならなくなるのです。
故人が借金をしていたことが発覚した場合の対応
とはいえ、被相続人にプラスの財産もあり、その中から借金を返済できるのであればよいですが、プラスの財産が借金を返済するのに足りない場合やプラスの財産がない場合も当然に相続するとなると、相続人は著しい不利益を被ることになります。
そこで、民法は、相続人に対し、相続について①相続放棄、②単純承認、③限定承認という3つの選択肢を与えています。
それぞれ見ていきましょう。
①相続放棄とは
相続放棄とは、相続財産のプラスかマイナスかにかかわらず、すべての財産を引き継がないことをいいます。
基本的に、マイナスの財産がプラスの財産を上回っているようであれば、相続放棄をした方がよいでしょう。
もっとも、マイナスの財産がプラスの財産を上回っていたとしても、今住んでいる自宅を相続するために相続放棄ができないということもあります。
その場合、相続人は、マイナスの財産を返済しなければなりません。
以下では、相続放棄について具体的に説明します。
相続放棄の手続き
相続放棄をするには、故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に必要な書類を提出し、受理されなければなりません(民法938条)。
期間
相続放棄の手続きは、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内にしなければならないとされています(民法915条1項)。
「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」というのは、基本的に被相続人が死亡したことを知ったときを言います。
相続人は、相続放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる(民法915条2項)ので、被相続人の死亡後、直ちに調査に取り掛からなければなりません。
調査の結果、①相続放棄、②単純承認及び③限定承認のいずれをするかを決めます。
そして、①相続放棄又は③限定承認をする場合は、家庭裁判所で手続きをする必要があります。
3か月以内に相続放棄の手続きを行わなかった場合、②単純承認をしたとみなされる(民法921条2号)ので、②単純承認をする場合は特段の手続きは不要です。
とはいえ、3か月では調査が終わらない場合もあります。
その際は、家庭裁判所に対して期間伸長の申立てをすることにより、期間を伸ばしてもらえることがあります(民法915条1項但書)。
3か月の期間経過後に相続放棄をすることはできる?
調査の結果、プラスにしてもマイナスにしても財産があることが発覚した場合、それを前提に①相続放棄、②単純承認及び③限定承認のいずれをするか決めれば足ります。
ところが、相続の開始当時、被相続人には、プラスの財産もマイナスの財産もないと信じて相続放棄の手続きをとらずにいたところ、3か月の期間を経過した後になって借金が発覚するということがあります。
例えば、相続人である子は、何年も前に独立しており、被相続人である父の財産を把握しておらず、父も借金の存在を隠していたため、債権者からの督促状で初めて借金の存在を認識したような場合です。
このような場合も、相続放棄ができないとすると、相続人に非常に酷な結果となります。
そこで、最高裁判所(昭和59年4月27日判決)によると、相続人が、相続財産が全くないと信じ、かつそのように信じたことに相当な理由があるときは、相続財産の全部又は一部の存在を認識したときから3か月以内に相続放棄をすれば足りるとされています。
ただ、これはあくまで例外なので、遺された家族に迷惑をかけないためにも、死後、借金の存在が分かるようにしておいた方がよいでしょう。
②単純承認とは
単純承認とは、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も無限に引き継ぐことを言います(民法920条)。
プラスの財産がマイナスの財産が上回っていることが明らかであれば、単純承認をすることになるでしょう。
また、先に説明したとおり、マイナスの財産がプラスの財産を上回っているものの、単純承認をしなければならない場合もあります。
注意しなければならないのは、相続放棄をすべきにもかかわらず、被相続人の財産を処分してしまった場合、単純承認をしたとみなされ(民法921条1号)、相続放棄をすることができなくなってしまうことです。
被相続人の財産の処分とは、例えば、被相続人の預金口座からお金を引き出して使うこと、被相続人の財産を売却したり、廃棄したりすることが挙げられます。
他方で、支払期限が到来した債務を支払ったりすることは、被相続人の財産の処分に当たらないとされています。
また、経済的価値の低いものについて形見分けをしたとしても、相続放棄をすることはできると言われています。
借金の存在を知らない遺された家族としては、ついうっかり被相続人の財産を処分してしまったということがあり得ますので、死後、借金の存在が分かるようにしておいた方がよいでしょう。
③限定承認とは
限定承認とは、相続人が引き継ぐプラスの財産の範囲内で、マイナスの財産を負担することを言います(民法922条)。
限定承認は、被相続人のマイナスの財産がどの程度あるか不明で、プラスの財産が残る可能性がある場合に適した手続きです。
以下では、限定承認について具体的に説明します。
限定承認の手続き
限定承認をするには、故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に必要な書類を提出し、受理されなければなりません(民法924条)。
期間
限定承認の手続きは、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内にしなければならないとされています(民法915条1項)。
注意点
限定承認は、裁判所で手続きをするだけでは足りません。
被相続人のマイナスの財産を明らかにし、プラスの財産を換価した上で、債権者に対して弁済する手続きをする必要があります。
この手続きは、非常に難しいので、弁護士などの専門家に依頼しなければならないでしょう。
また、限定承認は、共同相続人の全員でしなければなりません(民法923条)。
そのため、例えば、共同相続人の中に、プラスの財産の方が明らかに多いと考えていて、単純承認を望んでいる人がいる場合にはできません。
なお、共同相続人が相続放棄をした場合、初めから相続人とならなかったものとみなされる(民法939条)ので、残った共同相続人で限定承認をすることは可能です。
このように限定承認をすることは、相続人に大きな負担となるので、プラスの財産とマイナスの財産がすぐに分かるようにしておくのがよいでしょう。
生前に債務整理を検討してみる
これまで説明したとおり、遺された家族としては、財産調査の結果、①相続放棄、②単純承認、③限定承認のいずれかを選択することになります。
マイナスの財産がプラスの財産を上回っているとしても、相続すべきプラスの財産がないのであれば、相続放棄を選択することで、被相続人が残した借金を返済する必要はなくなります。
問題は、マイナスの財産がプラスの財産を上回っているものの、自宅を相続するために単純承認をせざるを得ないという場合です。
相続人は、相続により被相続人が残した借金を返済しなければなりません。
このような事態を避けるために、生前の段階で、債務整理をして借金をなくすことを検討されてもよいかもしれません。
まとめ
以上、借金をしていた人が死んだ場合に借金はどうなるのか、家族が借金を残して死んだ場合にどのような対応をとるべきかについて解説しました。
遺された家族に迷惑をかけないようにするためにも、生前に債務整理をして借金をなくしておけるとよいでしょう。
それが難しい場合には、少なくとも家族が借金の存在にすぐ気が付けるようにしておくことが肝心です。
以上
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