自己破産をすると住宅ローンは通らない?任意整理や個人再生・自己破産と住宅ローン

自己破産を考えているものの、ローンを組んで購入した自宅がどうなってしまうか不安で、自己破産を躊躇している人はいませんか?

また、今は住宅ローンを組んでいないものの、将来的に住宅ローンを組めなくなることが不安で、自己破産を躊躇している人もいるのではないでしょうか。

この記事では、既にローンを組んで自宅を購入している人、将来的に住宅ローンを組んで自宅を購入したいと考えている人それぞれに向けて、自己破産をした場合にどうなるかを分かりやすく説明します。

また、大切なことなので最初に結論からお伝えします。

『1年以上、借金の返済総額が減っていないor増えている。』

『このまま借金を完済するのは厳しいのは分かっているけど、利息だけ毎月支払うような状態が1年以上続いている。』

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それでは解説をしていきます。

自己破産をすると住宅ローンはどうなる?

結論から言うと、自己破産をすると、住宅ローンを返済する必要はなくなります。

しかしながら、自宅を処分しなければなりません。

自己破産は、債務者の財産を処分してお金に換え、これを債権者への返済に充て、それでも残った債務をゼロにするという手続きだからです。

ところで、自宅を所有したままで自己破産をするとなると、住宅ローンの残高が自宅の時価を上回っているいわゆる「オーバーローン」の場合とそうでない場合とでは手続きが異なります。

それぞれ見ていきましょう。

管財事件と同時廃止

前提として、自己破産の手続きには、「管財事件」と「同時廃止」の2種類があります。

両者を区別するのは、「破産管財人」が関わるかどうかです。

管財事件は?

先に説明したとおり、破産は、債務者の財産を処分してお金に換え、これを債権者への返済に充て、それでも残った債務をゼロにするという手続きを裁判所に申し立てるものです。

そのため、債務者の財産を処分してお金に換え、債権者へ配当しなければなりません。

また、裁判所が、残った債務をゼロにすることを認めるに当たっては、借金の理由、使途、債務者の態度等を調査する必要があります。

しかしながら、裁判所自らこれらをすることは困難です。

そこで、裁判所は、裁判所に代わって債務者の財産を処分してお金に換え、債権者へ配当させたり、借金の理由、使途、破産者の態度等の調査をさせたりする人を選びます。

こうして選ばれるのが破産管財人です。

そして、破産管財人が選ばれた事件を管財事件といいます。

同時廃止は?

同時廃止は、簡単に言うと、破産手続を申し立てると同時に破産手続が終了するものです。

したがって、同時廃止の場合、破産管財人は選ばれません。

どのような場合に管財事件となる?

自己破産の手続きについて定めた破産法上は、管財事件を原則としています。

しかしながら、個人の自己破産の手続きの場合、同時廃止となる場合が多数です。

それでは、どのような場合に管財事件となるのでしょうか。

破産法上、同時廃止の要件は、裁判所が「破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるとき」と定められています。

破産財団とは、債務者が破産を申し立てた時点で保有している財産のことです。

破産手続費用とは、「破産管財人の報酬等」とされています。

破産管財人の報酬は、各裁判所によって異なりますが、個人の自己破産の手続きの場合、一般的には20万円程度とされています。

したがって、簡単にいうと、債務者が20万円を超える財産を保有している場合は、管財事件になるということになります。

管財事件と同時廃止の違いは?

管財事件の場合、破産管財人が財産の調査や管理、事実関係の調査を行います。

そのため、同時廃止の場合と比べて時間を要します。

また、管財事件の場合、債務者が管財人の報酬(20万円程度)を負担しなければなりません。

つまり、債務者にとっては、手続きが早い、安く済むという点で同時廃止の方が、メリットが大きいといえます。

オーバーローンでない場合

それでは、自宅を所有したままで自己破産をする際、オーバーローンでない場合、つまり自宅の時価が住宅ローンの残高を上回っている場合について見ていきましょう。

このような場合、債務者が20万円を超える財産を保有しているとして、破産管財人が選任され、管財事件となります。

そうすると、本来であれば、破産管財人が売主となって自宅を売却し、換価しなければなりません。

もっとも、住宅ローンを組むに当たって、債権者は、債務者が住宅ローンの支払いをできなくなったときの担保として自宅に抵当権を設定するのが一般的です。

このように自宅に抵当権が付いている場合、債権者は、自己破産の手続きによることなく、競売を申立てることが可能とされています。

ただ、競売よりも任意で売却する方が高値で売れるのが一般的です。

そのため、債権者は、破産管財人と協力して、任意で売却することが多くなっています。

結局、任意で売却するのであれば、自己破産の手続きを申し立てる前に売却してしまうことも有効です。

そうすれば、自宅の他に財産がなければ、同時廃止となり、債務者がメリットを享受できるからです。

なお、破産管財人が売主となって売却する場合も、競売の場合も、買主が現れ、手続きが済むのには多少の時間がかかります。

したがって、自己破産の手続きを申し立てたからといって直ちに立ち退かなければならないわけではありません。

オーバーローンの場合

他方で、裁判所は、住宅ローンの額が固定資産評価額の1.5倍を超えている場合、オーバーローンとして扱い、他に財産がなければ同時廃止としています。

この場合、債権者が自宅の競売を申し立てるのが一般的です。

もっとも、先に説明したとおり、競売よりも任意で売却する方が高値で売れるとされています。

そのため、債権者から、競売ではなく、債務者が売主となって任意の売却をするよう求められることも多いです。

自己破産以外に方法はないの?

ここまで、自宅を所有したままで自己破産をする場合について説明してきましたが、自宅を失うということは、債務者にとって非常に大きな問題です。

自宅を所有したまま債務の整理をする方法はないのでしょうか。

任意整理を検討する

そもそも、債務が住宅ローンだけで、何らかの事情(収入の減少、支出の増大等)により、毎月の返済が難しくなったのであれば、債権者に相談するのが一番です。

債権者としても、債務者が破産して、住宅ローン全額を回収できないような事態は避けたいので、毎月の返済額を減らすなどの対応をしてくれる可能性があります。

他方で、債務が住宅ローン以外にもあるようであれば、任意整理を検討することが考えられます。

任意整理とは、裁判所を介さず、直接貸金業者等と交渉し、将来利息や遅延損害金などを免責してもらい、毎月の返済額も減額して、残債務額を3年から5年で返済する内容の合意を締結する手続です。

住宅ローンの債権者だけでなく、それ以外の債権者との間でも、毎月の返済額を減らす合意を締結するのです。

もっとも、任意整理は、住宅ローン以外の債務が少ない場合に限って有効な手続きといえるでしょう。

一般的には、毎月の返済額の合計が手取り収入から住居費(住宅ローン)を差し引いた額の3分の1を超えるようであれば、任意整理は難しいと言われています。

個人再生の申立てを検討する

任意整理が難しい場合、債務者が「継続した収入を得る見込みがある」のであれば、破産より先に個人再生を検討すべきです。

個人再生とは、裁判所に申立てをして、すべての債務のうち一部を免除してもらい、残債務を3年(特別な事情がある場合、5年まで返済期間を延ばすことができます)かけて分割返済する手続です。

このとき、住宅ローンだけは減額せず、債権者との契約に従って払い続けるということが可能です。

債権者としても、契約に従って払い続けてもらえるのであれば、自宅を競売にかける必要がないので、自宅を失うこともありません。

もっとも、継続した収入を得る見込みがない場合、一部を免除しても3年ないし5年で分割弁済をすることができないほど債務の総額が大きい場合は自己破産をせざるを得ないでしょう。


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自己破産をした後に住宅ローンは組める?

ここまで、自宅を所有した状態で自己破産をする場合について説明してきましたが、自己破産をした後に住宅ローンを組めるのかという疑問についてお答えしていきましょう。

結論から言うと、自己破産をした後でも、一定の期間を経過すれば、住宅ローンを組むことは可能です。

しかしながら、以下のとおり、いくつかの注意点があります。

信用情報機関における自己破産の情報の登録が消えるのを待つ

そもそも、自己破産をすると、どうして一定の期間は住宅ローンが組めなくなるのでしょうか。

それは、住宅ローンを貸す側は、破産した人=返済能力がない人と判断し、貸し付けてくれなくなるからです。

ブラックリストに載るって?

では、住宅ローンを貸す側は、その人が破産したことがどうして分かるのでしょうか?

それがいわゆる「ブラックリスト」というものです。

実は、ブラックリストというものは存在しません。

クレジットカードを作ったり、消費者金融から借金をしたりすると、その人の顧客情報が「信用情報機関」に登録されます。

そして、返済が滞ったり、破産したりした場合、これらが「事故情報」として記録されるのです。

このように事故情報が記録されている状況が「ブラックリストに載る」と呼ばれています。

住宅ローンを貸す側は、貸付けをする際、返済能力を確かめるため、信用情報機関に登録されている情報を確認するのです。

事故情報はどれくらいで消える?

では、どうして、一定の期間に限って住宅ローンが組めなくなるのでしょうか。

それは、信用情報機関に登録されている情報は、一定の期間を経過すると抹消されるからです。

日本には個人に関する信用情報機関は3つあります。

そして、全国銀行個人信用情報センターは10年、CIC(株式会社シー・アイ・シー)、JICC(株式会社日本信用情報機構)は5年で破産についての事故情報を抹消するとしています。

したがって、自己破産についての事故情報が10年残る全国銀行個人信用情報センターが保有している情報を確認しない金融機関であれば、自己破産から5年を経過すれば、住宅ローンを組むことができる可能性が出てくるのです。

なお、「全国銀行個人信用情報センター」という名称から分かるとおり、銀行系の金融機関は、同センターが保有している情報を確認する可能性が極めて高いです。

そのため、少なくとも、銀行系の金融機関からは、自己破産から10年以上経過しなければ、住宅ローンの融資を受けることは極めて難しいでしょう。

すべての信用情報機関から自己破産についての事故情報が抹消される10年を経過するのを待つのが無難といえるかもしれません。

クレジットヒストリーを作る

では、信用情報機関から自己破産についての事故情報が抹消されれば直ちに返済能力があると判断されるのでしょうか。

実はそうではありません。

信用情報機関から自己破産についての事故情報が抹消されると、その人の信用情報が一切登録されていない状態になります。

しかしながら、クレジットカードがこれだけ普及している現代の日本において、クレジットカードを持っておらず、信用情報が一切登録されていないというのは、逆に不自然です。

クレジットカードを持てない理由があるという疑念を抱かせる可能性があります。

また、信用情報機関に登録される情報は、マイナス面だけではありません。

返済期限に遅れることなく返済したことも登録されます。

そこで、CIC(株式会社シー・アイ・シー)、JICC(株式会社日本信用情報機構)の自己破産についての事故情報が抹消された後、銀行系以外のクレジットカードを作りましょう。

そして、クレジットカードを利用し、確実に返済期限までに返済することを繰り返した記録を残すのです。

このような記録をクレジットヒストリーといいます。

こうすることで、返済能力への信頼度が高まるのです。

自己資金を多く用意する

住宅ローンを貸す側は、信用情報機関の情報だけで返済能力の有無を判断するわけではありません。

例えば、5000万円の自宅を購入するため、自己資金として現金1000万円を用意する場合と、5500万円の自宅を購入するため、自己資金として現金1500万円を用意する場合、融資を受けようとする金額はいずれも4000万円ですが、後者の方が審査に通る確率が上がるとされています。

それだけの現金を用意することができたという事実が、返済能力への信用を高めるのです。

そこで、自己破産後、自宅を購入するまでの間にできる限り自己資金を用意することに努めるのがよいでしょう。

複数の金融機関に申込みをしない

信用情報機関から自己破産についての事故情報が抹消されたとしても、自己破産をした当時債権者であった金融機関自身は自己破産についての情報を保有し続けることがあります。

そうすると、自己破産から10年経って、住宅ローンの借入れを申し込んだとしても、貸付けを受けられない可能性があります。

このとき、借入れの申込みが却下されたという情報も信用情報機関に6カ月間登録されることになっています。

このような状態で、他の金融機関に住宅ローンの借入れを申し込んだとしても、返済能力に疑問を抱かれる可能性は極めて高いです。

そのため、1つの金融機関で申込みを却下されてしまった場合、6か月以上、間をあけてから、他の金融機関に住宅ローンの借入れを申し込むのがよいでしょう。

配偶者名義で住宅ローンの借入れを申し込む

このように様々な点に注意したとしても、一度自己破産をしてしまうと、住宅ローンの借入れの申込みを却下されてしまう可能性はあります。

そのような場合、配偶者名義で住宅ローンの借入れを申し込むことが考えられます。

住宅ローンを貸す側は、信用情報機関に対し、あくまで借入れを希望する本人についてしか照会しないのです。

もっとも、配偶者名義で住宅ローンの借入れを申し込む場合、配偶者自身に収入がなければなりません。

支払能力の有無については、あくまで、借入れを希望する本人の収入を前提に判断されるからです。

まとめ

以上、既にローンを組んで自宅を購入している人、将来的に住宅ローンを組んで自宅を購入したいと考えている人それぞれに向けて、自己破産をした場合にどうなるかを説明しました。

ただ、もしかすると、自己破産以外にも道があるかもしれません。

手遅れになる前に専門家への相談をお勧めします。

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