借金問題を抱えていて債務整理を検討している人の中には,ブラックリストに載ることを心配している人が非常に多いです。
債務整理をする前に,「ブラックリストに載る」というのは結局具体的にはどういうことなのか,また,ブラックリストと債務整理の関係はどのようなものなのかについて,正しい知識を持っておくことは大切です。
この記事では,ブラックリストと債務整理の関係について,詳しく説明していきます。
また、大切なことなので最初に結論からお伝えします。
『1年以上、借金の返済総額が減っていないor増えている。』
『このまま借金を完済するのは厳しいのは分かっているけど、利息だけ毎月支払うような状態が1年以上続いている。』
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それでは解説をしていきます。
ブラックリストとは
それでは,一般的にブラックリストに載るといわれていることが正確には何を意味しているのか,また,ブラックリストに載るとどのような問題が起きるのかについて,まずは説明していきます。
ブラックリストに載るとはどういうことか
まず,「ブラックリスト」とは何なのか,ということですが,実は,世の中にブラックリストという名称のリストが存在するというわけではありません。
ですので,ブラックリストが何か,というよりも, “ブラックリストに載る”といわれるのがどのような状態なのかが問題となります。
一般的に,ブラックリストに載っている状態というのは,「個人信用情報」に「異動情報」(「事故情報」)が登録されていることをいいます。
「個人信用情報」とは,クレジットやローンなどの借金に関する個人の情報で,金融機関が新たに貸付けを行う際に,支払い能力,信用力を審査するための情報として確認しているもののことをいいます。
これらの個人信用情報を管理し提供している機関のことを,「信用情報機関」といいます。
そして,「異動(事故)情報」というのは,信用情報機関が保有する個人信用情報に登録される様々な事情のうち,ネガティブな情報(延滞などのナイナスの事情)のことをいいます。
つまり,一般的にブラックリストに載るといわれていることがどういうことか,簡単にまとめますと,借金に関するネガティブな個人情報が,個人信用情報に登録されることなのです。
それでは,ブラックリストに載ると,どのような問題が起きるのでしょうか。
先ほど説明したように,金融機関は,新たな貸付けを行う際に,個人信用情報を確認します。
ブラックリストに載るということは,金融機関が個人信用情報を確認した際に,異動(事故)情報が判明してしまうということです。
そうすると,支払い能力,信用力に問題があると考えられてしまいますので,住宅ローンや自動車ローンの契約,クレジットカードの作成などの借り入れの申込みの際の審査に落ちてしまう可能性が極めて高くなるのです。
つまり,ブラックリストに載ると,新たな借金がほぼできない状態になるのということです。
信用情報機関
加盟する金融機関から登録される情報信用を管理・提供する信用情報機関には,以下の3つの機関があります。
1 全国銀行個人信用情報センター
2 株式会社 シー・アイ・シー(CIC)
3 株式会社日本信用情報機構(JICC)
3つの機関では,それぞれ登録される個人信用情報の種類や,登録される期間などが少しずつ違っています。
もっとも,多くの金融機関は,これらの機関に重複して加盟していたりしますし,事故情報については,基本的に,3つの機関が運用するCRINという信用情報交流ネットワークで共有されていますので,どの金融機関も事故情報を確認することができると考えておいた方がよいでしょう。
登録期間
もっとも,ブラックリストに載ってしまったからといいって,永遠にその状態が続くわけではありません。
信用情報機関は,クレジットやローンなどの契約内容,返済・支払状況,債務整理に関する情報など,様々な情報を保有していますが,それぞれの情報ごとに一定の保有期間を定めています。
その期間は,最長でも10年間です。
債務整理をした場合に登録される信用情報の具体的な登録期間については,この後の債務整理との関係の中で説明します。
債務整理とは
ブラックリストと債務整理の関係を考えるにあたって,まず,債務整理とは何なのかについて触れておきます。
債務整理は,合法的に,借金を減らしたり,支払い方法を変更したり,免除してもらったりする手続全般のことをいいます。
債務整理には,いくつかの種類があります。以下,種類ごとに簡単に説明します。
任意整理
任意整理とは,裁判所を通すことなく,債権者である金融業者等と直接話し合いをして,借金の額や返済方法などを決め直す手続きのことをいいます。
借金の額についてですが,多くの場合,債権者との交渉によって,利息や遅延損害金をカットしてもらいます。
返済方法については,支払い期間を延ばしてもらうなどの交渉をします。
このような交渉を経て,債権者と和解を締結することによって,月々の支払い額を減らし,借金の負担を軽減するのが,任意整理です。
過払い金請求
過払い金請求とは,貸金業者から,利息制限法の上限を超えた利息を違法に取られていた場合に,払いすぎた利息を取り戻すことをいいます。
個人再生
裁判所に申し立てて,借金を減額(借金の総額などにより異なりますが多くは5分の1)してもらい,原則として3年の分割払いで返済する計画を立てる手続です。
任意整理の場合よりも大幅に借金を減額することができます。
また,諸条件はありますが,住宅ローン特則という制度を利用すれば,住宅ローンは支払いを続けながら,他の借金を減額することができます。
そのため,住宅ローンが残っている住宅を手放さなくても済むことがあるのが大きな特徴です。
自己破産
裁判所に申し立てて,自分の財産を処分して借金の返済に充てることを条件に,借金を免除してもらう手続です。
借金が0になるというのが最大の特徴です。
債務整理とブラックリストの関係
以上の債務整理を行うと,ブラックリストに載ることになるのでしょうか。
載った場合の期間も含めて,見ていきます。
任意整理
任意整理については,上記信用情報機関のうち,JICCにおいては,任意整理をしたということそのものが事故情報として登録されます。
登録期間は,5年以内です。
その他の2つの機関では,「任意整理」が直接登録されることはありません。
しかし,任意整理を行う場合,延滞がある場合がほとんどであると思われます。
延滞は,事故情報として登録されてしまうため,その場合,結局ブラックリストに載ることにはなります。
例えば,CICの場合,返済日より61日以上または3ヵ月以上の支払遅延(延滞)があるものまたはあった場合に,「異動」として登録されることになっています。
完済後5年以内が登録期間となっています。
したがって,任意整理の場合,おおむね5年間は,ブラックリストに載ると考えてよいでしょう。
過払い金請求
現在では,過払い金請求をしたというだけでブラックリストに載ることはありません。
以前は,債務がまだ残っている状態で過払い金返還請求をした場合,ブラックリストに載ってしまうこともありましたが,今では,そのようなことは認められない運用となっています。
ただし,まだ借金を完済していなくて,引き直し計算をしても借金が0にならないというような場合には,任意整理と同じ状況になって,ブラックリストに載るということはあり得ます。
また,過払い金請求をしただけであって事故情報として登録されるべきケースではないにもかかわらず,金融機関が登録してしまうケースもあるようです。
そのような場合には,削除を求めることができますので,弁護士に相談しましょう。
個人再生
個人再生については,JICCでは,そのまま個人再生の事実が事故情報として登録されます。
JICCにおける登録期間は,発生日から5年を超えない期間です。
全国銀行個人信用情報センターでは,官報情報が登録されることになっています。
官報とは,国が発行する新聞のような機関紙です。個人再生を行うと,この官報に掲載されることになっています。
ですから,全国銀行個人信用情報センターにおいては,官報情報として,個人再生の事実が登録されることになります。
登録期間は,決定日から10年を超えない期間です。
CICにおいては,個人再生を申し立てたこと事実などが直接登録されることはありません。
もっとも,返済状況は登録されますので,金融機関が確認した際に金融事故があったことが推認されるような内容にはなると思われます。
自己破産
自己破産を行った場合にも,個人再生と同じように官報に掲載されます。
ですから,自己破産についても,全国銀行個人信用情報センターでは,官報情報の登録としての登録があります。
CICにおいては,現在は,官報情報を保有していません。
もっとも,自己破産をして免責許可決定を受けたことは,異動情報として登録されます。
登録期間は,免責許可決定が確認できた会員会社からの報告日から5年間です。
JICCでも,異動情報としての登録があります。
登録期間は,個人再生と同じく5年間です。
まとめ
以上のように,債務整理をすると,多くの場合には,ブラックリストに載ってしまいます。
もっとも,永遠に載っているわけではなく,5年~10年たてば,削除されます。
また,債務整理後に一定期間ブラックリストに載って新たな借金ができなくなることは,債務整理後の生活再建の意味では,よい面もあるといわれています。
借金ができなくなるので,いやおうなしに借金をせずに生活をしていくリズムを身に付けられるなどのメリットがあるからです。
ですから,ブラックリストを恐れて借金問題を放置するのは,得策とはいえません。
ブラックリストに載ることを恐れて債務整理に踏み出すことができないような人は,一度思い切って弁護士に相談し,メリットデメリットのアドバイスを受けてみることをおすすめします。
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