60代の債務整理の方法~任意整理、個人再生、自己破産、過払い金請求の選択肢

60代で定年退職を迎えると、収入が大きく減るので、これまで毎月の給料やボーナスなどで騙し騙ししてきた借金の返済が難しくなります。

そのため、債務整理を検討する人が多いのではないでしょうか。

実は、60代の人の債務整理は、他の年代の人の債務整理以上に気を付けなければならないことがあります。

というのも、それまでの60年間で財産を築いてきた人が多いからです。

そこで、この記事では、債務整理の種類について説明した上で、60代の人の債務整理にみられる4つの特徴、債務整理の方法について詳しく解説します。

また、大切なことなので最初に結論からお伝えします。

『1年以上、借金の返済総額が減っていないor増えている。』

『このまま借金を完済するのは厳しいのは分かっているけど、利息だけ毎月支払うような状態が1年以上続いている。』

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それでは解説をしていきます。

債務整理の種類

債務整理は、借金を整理し、無理なく返済をすることができるようにするための手続きを言います。

債務整理の方法として、一般的によく使われるのは任意整理、破産、個人再生の3つです。

それぞれどのような手続きか見ていきましょう。

任意整理とは

任意整理とは、裁判所を介さず、直接貸金業者等と交渉し、利息や遅延損害金の支払いを免除してもらった上で、毎月の返済額も減額してもらい、借金そのもの(元本)を3年から5年で返済する内容の合意を締結する手続きです。

他の2つの手続きと比較した主なメリットは、①手続きが速くて簡単であること、②財産を残せること、③家族や勤務先などに知られることなく行えることにあります。

破産とは

破産とは、裁判所に申立てをして、破産者の財産を処分してお金に換え、これを債権者への返済に充て、それでも残った借金をゼロにするという手続きです。

破産の最大のメリットは、何といっても借金をゼロにすることができることでしょう。

一方、デメリットは、ほとんどすべての財産を処分する必要があることです。

個人再生とは

個人再生とは、裁判所に申立てをして、借金の一部を免除してもらい、残った借金を3年(特別な事情がある場合、5年間まで返済期間を延ばすことができます)かけて分割で返済する手続きです。

個人再生は、破産のように借金をゼロにすることはできませんが、借金そのもの(元本)は減額されない任意整理よりは返済額が少なくなります。

また、個人再生は、ほとんどすべての財産を処分しなければならない破産と異なり、自宅を処分しないで済む手続きです。


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60代の人の債務整理の4つの特徴

債務整理の種類やそれぞれの手続きの特徴が分かったところで、60代の人の債務整理によく見られる4つの特徴について見ていきましょう。

併せて、特徴に該当する人が選ぶべき債務整理の方法についても解説します。

①過払金がある可能性がある

一般的に、60代で債務整理を考える人は、相当長期間に亘って消費者金融などから借金をしては返済するという行為を繰り返していることが多いです。

借金を開始したのが平成19年以前である場合、消費者金融などから利息制限法に違反した高い利率での貸付けを受けていた可能性があります。

そのような場合、これまでの貸付けと返済を利息制限法に基づく正しい利率に引き直して計算しなければなりません。

利息制限法に基づく正しい利率に引き直して計算した結果、借金の残高が減ることがあります。

さらに、すでに借金の返済は終わっており、返済をしすぎた「過払い」の状態になっているということもあるのです。

「過払い」の状態になっている場合、消費者金融などに対して、過払金の返還請求をすることになります。

すべての債権者に対して「過払い」の状態になっているようであれば、債務整理をする必要がないどころか財産が増えるでしょう。

また、ある債権者に対してのみ「過払い」の状態になっているようであれば、その債権者から返還を受けた過払金を他の債権者への返済にあてることが可能です。

このような場合、借金総額が減るので、まずは任意整理で対応できるかを検討するのがよいでしょう。

②自宅を所有していることが多い

自宅を所有している60代の人が多く、債務整理をするにあたっては、自宅をどうするかが問題になることがほとんどです。

自宅を残したいということであれば、ほとんどすべての財産を処分しなければならない破産を選ぶことはできません。

任意整理か個人再生のいずれかを選ぶことになるでしょう。

一般的に、毎月の返済額の合計が手取り収入から住居費を差し引いた額の3分の1を超えるようであれば任意整理は難しいとされています。

ところで、任意整理も個人再生も、毎月一定額を返済する手続きです。

そのため、60代で既に定年退職をし、毎月継続的な収入がなくなってしまっていると、これらの手続きをすることは難しいでしょう。

任意整理の場合、債権者が合意をしてくれない可能性があります。

また、個人再生の場合、そもそも、3年の返済期間中に継続的な収入を得る見込みがなければ裁判所からの許可が下りません。

さらに、個人再生は、債権者の同意が必要とされ、これが得られない可能性もあります。

そこで、所有する自宅を残すため、任意整理や個人再生の手続きを検討されているのであれば、60代で定年退職をする前に手続きをしなければなりません。

③退職金を受け取る権利があることが多い

60代の人の債務整理は、退職金を受け取る権利のあることが問題になるのも特徴です。

個人再生や破産をする場合

既に退職金の支給を受けている場合、退職金は、現金ないし預貯金と同じ扱いになるので、個人再生や破産をする場合、ほとんどすべてを債権者への返済にあてなければならなくなります。

そのため、個人再生や破産の手続きをとることを考えているのであれば、退職する前に済ませるのがよいでしょう。

個人再生や破産の手続きをする時点で、退職予定日まで期間が開いているときは、その時点での退職金支給見込み額の8分の1に限って財産と扱われます。

他方で、退職が間近の場合、退職金支給見込み額の4分の1を財産として扱わなければなりません。

財産として扱うというのは、簡単に言うと、債権者への返済に充てられるということです。

このように退職が間近に迫って、個人再生や破産の手続きをすると、受け取れる退職金の額が減ることになるので、できるだけ早く手続きをするようにしましょう。

任意整理をする場合

一方、任意整理の手続きをする場合であっても退職する前に済ませる方がよいでしょう。

なぜかというと、債権者は、債務者の勤務先なども把握しているので、年齢から定年退職済みないし間近であることを推測することができます。

そのような場合、債権者は、退職金で遅延損害金および利息を含めた借金を返済することが可能と考え、任意整理の交渉に応じてくれないケースがあるからです。

場合によっては、退職金で一括返済をするよう求められるケースもあります。

④債務整理以外の方法を検討する必要のあることが多い

最後に、60代の人の債務整理では、債務整理以外の方法を検討する必要のあることが多くなっています。

というもの、任意整理や個人再生の手続きをすることは難しく、本来であれば破産しかないものの、自宅を所有しており、これを何とかして残したいという人が多いからです。

では、債務整理以外の方法として考えられるものを見てみましょう。

子の協力を仰ぐ

債権者に対して任意整理の申入れをしたものの、債権者がこれに応じないような場合、子に連帯保証人となってもらうことが考えられます。

債権者としては、定年退職を間近に控え、継続的な収入がなくなる見込みである債務者本人の返済能力に疑問はあるものの、継続的な収入がある子の返済能力を信頼する可能性があります。

リバースモーゲージを検討する

リバースモーゲージという言葉を聞いたことがあるでしょうか。

リバースモーゲージとは、自宅に住みながら、自宅を担保にお金を借りるというものです。

契約者または契約者夫婦2人が死亡すると契約終了となり、銀行が担保にしていた自宅不動産を売却して現金化し、そのお金で貸付金を回収します。

もし、売却代金が借金を上回り、お金が残った場合は、遺族に返還されます。

融資限度額は自宅の評価額の50~80%程度であることが一般的です。

不動産のローンが残っている場合、自宅の評価額から残ローン額が控除されますが、60代ともなると残ローン額がかなり少なくなっているでしょう。

そのため、高額な借入れをすることが可能です。

このリバースモーゲージは、自宅を担保にして老後の資金を得るために用いられることが多いのですが、使途は問われません。

なので、リバースモーゲージによって借り入れたお金を別の債権者への返済にあてることも可能です。

プランによっては、毎月利息だけ支払う必要がありますが、そうでなければ、生前は借金の返済をする必要がなくなります。

死後、遺族に自宅を遺すことができなくなるので、任意整理や個人再生の手続きをとることがどうしても難しい場合に検討するのがよいでしょう。

まとめ


以上、債務整理の種類、60代の人の債務整理にみられる4つの特徴、債務整理の方法について解説しました。

説明したとおり、何より大切なことは、債務整理をする場合、定年退職をする前に動き出さなければならないということです。

一日も早く弁護士などの法律の専門家に相談してください。

以上

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