美容師の債務整理を成功させる方法~美容師が任意整理や自己破産、個人再生するとどうなる?

人気職業の一つである美容師。
平成29年賃金構造基本統計調査によると、理・美容師の給与月額の平均は24万1700円、賞与の平均は57万9000円で、年収にすると347万9400円とされています。
もっとも、これは全年齢の平均です。

美容師免許を取って、美容室に就職したら、最初からお客さんにカットやカラーをすることができるわけではありません。まずは「アシスタント」としてスタートし、カット、カラー、パーマなどの補助業務やシャンプー、マッサージなどから始め、仕事の合間や閉店後にカットやパーマなどの練習をします。

このようないわば「修行」期間を経て、カットやカラーなどの技術が上がり、お客さんを取れるようになったら「スタイリスト」への昇格できるのが通常です。

そして、アシスタントとして働く間の基本給は決して高いとは言えず、仕事の合間や閉店後の練習には残業代が出ず、ハサミやブラシなどの道具にもお金がかかるということはよく知られています。

スタイリストになると、とれたお客さんの売上げに応じた歩合給になることが多いですが、満足にお客さんがとれず、低い給料のままということもあるでしょう。さらに、スタイリストになった後、独立して自分で美容室を持つようになったものの、思っていたようにお客さんが取れないということもあるかもしれません。

美容師として働く人の中には、こうした苦しい状況で借金が膨らみ、債務整理を考えているものの、「美容師の資格はどうなる?」「勤務先に知られてクビになる?」などと不安に思っている人がいるかもしれません。

そこで、この記事では、債務整理の種類について説明した上で、美容師の債務整理の9つのポイントと注意点について詳しく解説します。

また、非常に重要なことなので先に結論をお話します。

借金トラブルは時間がたてばそれだけ、対応が難しくなり事態はあっという間に深刻化していきます。

問題を解決した後の影響も大きくなるのも否定できません。

・借金を完済するのは、自分の力だけでは不可能と分かりながらも問題を後回しにしてしまっている。

・返済をして家賃などを支払うと給料の多くが減ってしまい、クレジットカードでしのいだりお金を借りてしまう状態がずっと続いている。

このように感じたことが1度でもある方は、非常に危険と言わざるを得えない状態です。

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債務整理の種類

債務整理とは、借金を整理し、無理なく返済をすることができるようにするための手続きをいいます。一口に債務整理といっても、いくつかの種類があります。

そこで、美容師の債務整理のポイントと注意点を説明する前に、一般的によく使われる任意整理、破産、個人再生の3つについて、それぞれどのような手続きか見ていきましょう。

任意整理とは

任意整理とは、裁判所を介さず、直接貸金業者などと交渉し、利息や遅延損害金の支払いを免除してもらった上で、毎月の返済額も減額してもらい、借金そのもの(元本)を3年から5年で返済する内容の合意を締結する手続きです。

他の2つの手続きと比較した主なメリットは、①手続きが速くて簡単であること、②財産を残せること、③家族や勤務先などに知られることなく行えることにあります。

破産とは

破産とは、裁判所に申立てをして、破産者の財産を処分してお金に換え、これを債権者への返済に充て、それでも残った借金をゼロにするという手続きです。破産の主なデメリットは、財産を処分しなければならないこと、資格制限・職業制限を受けることにあるでしょう。

なお、破産の場合、裁判所に手続きの申立てをすると、国が発行するいわば新聞である「官報」に氏名、住所が掲載されることになっています。

個人再生とは

個人再生とは、裁判所に申立てをして、借金の一部を免除してもらい、残った借金を3年(特別な事情がある場合、5年間まで返済期間を延ばすことができます)かけて分割で返済する手続きです。個人再生も、破産と同じく、裁判所に手続きの申立てをすると、「官報」に氏名、住所が掲載されます。


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美容師の債務整理の9つのポイントと注意点

債務整理の種類が分かったところで、美容師の債務整理の9つのポイントと注意点について見ていきましょう。

美容師資格は取り消されない

美容師資格は、美容師法が定める国家資格です。美容師資格を取得するには、美容師養成施設で美容師になるのに必要な知識及び技能を修得した上で、美容師試験に合格しなければなりません。

先ほど、破産をした場合のデメリットとして、資格制限がなされることを挙げましたが、債務整理をした場合、この美容師資格がどうなるか非常に気になりますよね。

実は、先に挙げたいずれの方法で債務整理をしたとしても、一度取得した美容師資格が取り消されることはありません。美容師法第10条1項と3項は、美容師資格の取消事由を挙げていますが、①心身の障害により美容師の業務を適正に行うことができない場合、②業務の停止処分に違反した場合とされています。

このように債務整理をしたとしても、美容師資格は取り消されないので、安心してください。なお、資格制限を受けるのは、弁護士(弁護士法7条5号)、税理士(税理士法4条3号)、公認会計士(公認会計士法4条5号)など、他人の財産に関わる資格です。

雇用されて美容室で働く人の場合

さて、冒頭で触れたとおり、美容師には、雇用されて美容室で働く人と、自分で美容室を経営する人とがいます。そこで、まずは、雇用されて美容室で働く人特有の債務整理のポイントと注意点について見ていきましょう。

債務整理をしたことは勤務先に知られる?

先に説明したとおり、債務整理をしたことは、美容師資格の取消事由ではありません。そのため、債務整理をしたとしても、そのことを勤務先に報告する必要はないかもしれません。

反対に、債務整理をしたことが勤務先に知られてしまう可能性はあるのか心配ですよね。まず、任意整理の場合、債権者と直接交渉するだけですから、秘密裏に手続きを行うことが可能です。基本的に勤務先に知られることはありません。

一方、破産と個人再生の場合、勤務先に知られてしまう可能性は高いです。先に説明したとおり、破産や個人再生をすると、住所、氏名が官報に掲載されます。

もっとも、官報に目を通している人はほとんどいないため、破産や個人再生をしたことが勤務先に知られるのは、基本的に官報からではありません。破産や個人再生の場合、裁判所から勤務先の協力がないと得られない書類の提出を求められます。

具体的には、給与明細、源泉徴収票、退職金の見込額証明書などです。給与明細や源泉徴収票は、既に手元にあればよいですが、退職金については、破産や個人再生を申し立てる時点での見込額を証明しなければならないため、必ず勤務先に作成してもらう必要があります。

そうすると、勤務先から用途を確認され、ごまかすことができず、債務整理をしたことが勤務先に知られてしまう可能性があるのです。

「クビ」になる?

債務整理をしたことが勤務先に知られた場合、それを理由にいわゆる「クビ」になってしまうのではないかと心配ですよね。一般的に、使用者は合理的な理由がない限り、従業員を解雇することはできないとされています。

そして、債務整理をしたという私生活の事柄を理由に従業員を解雇することは、合理的な理由がないと判断されるのが一般的です。そのため、債務整理をしたことが勤務先に知られたとしても、クビになることは考えにくいでしょう。

基本的に任意整理がお勧め

このように雇用されて美容室で働く人が債務整理をしたとしても、美容師資格は取り消されず、基本的に勤務先をクビにはならないことがお分かりいただけたと思います。もっとも、先に説明したとおり、任意整理以外の手続きだと、勤務先に知られてしまう可能性が高いです。

クビにはならないとしても、居心地の悪い思いをするかもしれません。そのため、雇用されて美容室で働く人が債務整理をする場合、基本的には任意整理を選ぶのがよいでしょう。

破産や個人再生を選んでも美容師は続けられる

基本的には任意整理を選ぶのがよいとしても、一般的に、毎月の返済額の合計が手取り収入から住居費を差し引いた額の3分の1を超えるようであれば任意整理は困難と言われています。そのような場合は、破産や個人再生を選ばざるを得ないでしょう。

破産と個人再生のいずれを選ぶべきかについては、分かりやすくするために大雑把に言うと、自宅を所有していて手放したくない場合は個人再生を、そうでない場合は破産を選ぶのがよいと考えてください。

なお、先ほど、破産は、破産者の財産を処分してお金に換える手続きであると説明しました。そうすると、仕事で使うハサミなどの道具も処分しなければならないのかという不安を持つのではないでしょうか。

ハサミの中には非常に高額なものもあるようです。しかし、破産の手続きについて定めた破産法は、個人の破産の場合、債務者の「自由財産」は処分しなくてよいこととしています。

そして、この自由財産には、法律によって差押えが禁止された財産が含まれるとされているのですが、美容師として働く人が仕事で使うハサミなどの道具は「技術者の業務に欠くことができない器具」として差押えが禁止されています(民事執行法131条6号)。

したがって、破産を選んだとしても、ハサミなどの道具を処分する必要はありません。破産や個人再生を選んでも美容師を続けることができます。

自分で美容室を経営している人の場合

 

最後に、自分で美容室を経営している人の場合の注意点について見ていきましょう。

美容室の経営を続けるのであれば個人再生

任意整理は、利息や遅延損害金の支払いは免除してもらえるものの、元本は減らないため、借金の金額が少ない場合に有効な手続きとされています。自分で美容室を経営している人の場合、借金の金額は相当膨れ上がっており、任意整理では解決できないことが多いでしょう。

そうすると、破産か個人再生ということになりますが、破産を選択した場合、美容室の経営を続けるのは難しいと言わざるを得ません。美容室の経営を続けたいのであれば、個人再生を選ぶことになります。

なお、借金の金額が5000万円を超える場合、個人再生を選ぶことはできないので、基本的に破産を選択し、美容室の経営を続けることは諦めざるを得ないでしょう。

リース物件に注意

事業を営んでいる人の個人再生は、会社員や公務員として働く人の個人再生と比べて注意しなければならない点があります。

その一つがリース物件の取り扱いです。例えば、シャンプー台などの高額な設備をリースしていて、個人再生を申し立てる前にリース料の支払いを滞納していた場合、リース会社によってリース契約を解除され、設備を引き揚げられてしまう可能性があります。

そのリース物件が他のリース業者から調達できる代替性のあるようなものである場合には、その引き揚げに応じて、新たに他の業者との間でリース契約を結ぶことが考えられます。

他方、リース物件が他のリース業者から調達できるような代替性のあるものではない場合には、これを継続して使用する必要性が高いといえるでしょう。こういった場合は、個人再生手続きの中で、リース会社と別除権協定を結ぶという方法が考えられます。

この別除権協定をリース会社との間で締結すると、残存リース期間の利用権相当額について、特別に再生手続によらずに返済することができるようになります。その結果、リース物件を継続して利用することが可能になるのです。

賃料の支払いに注意

個人再生を申し立てる前に賃料を滞納してしまっていた場合、この滞納賃料は、他の借金と同様に減額されてしまいます。また、再生計画で定めた以外の方法での弁済を禁止されます。

つまり、個人再生手続きの開始後に、賃料の滞納分だけを支払って滞納を解消することはできないのです。そうすると、貸主としては、賃料の不払いを理由に退去を求めることが可能となります。

退去を避けるためには未払賃料を支払うより他はありませんが、先に説明したとおり、債務者自身は支払うことができません。そうすると、家族など自分以外の第三者に支払ってもらうことで対応せざるを得ないでしょう。

用品の代金の支払いに注意

例えば、シャンプーやリンス、カラー剤などの用品の代金について、個人再生を申し立てる前に滞納してしまっており、滞納分を支払わなければ、用品を搬入してもらえず、美容室の営業に支障を来すような場合、再生計画によらずに支払うことも可能です。もっとも、裁判所の許可を得る必要があります。

まとめ

以上、債務整理の種類について説明した上で、美容師の債務整理9つのポイントと注意点についてについて解説しました。説明したとおり、美容師として働く人も債務整理をすることが可能です。

ただ、借金が膨らんでくると、選択肢が狭まってきてしまいます。雇用されて美容室で働く人は、任意整理をすることができなくなり、勤務先に知られる可能性が高い方法で債務整理をせざるを得なくなります。

また、自分で美容室を経営している人は、個人再生をすることができなくなり、美容室の経営を続けることが難しくなってしまうかもしれません。今、債務整理をしようか迷っている美容師の人は、一日も早く弁護士などの法律の専門家に相談してください。

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