借金のある状態で、万が一自分が死んでしまった場合、家族はどうなってしまうのかと心配になってしまう方も多いのではないでしょうか。
また、もし自分の両親などが借金を抱えたまま亡くなった場合に、残された親族としてその借金にどう対処したら良いかということも知っておいた方が良いでしょう。
この記事では、法律の専門的な視点から、まず相続の場面において借金がどのように取り扱われるかについて解説します。
また、生前に「債務整理」で借金の負担を減らす方法や、そのメリットや注意点についても併せて解説します。
相続と借金についての正しい知識を身に着けて、いざその場面が訪れた時に冷静に対処できるようになってください。
また、大切なことなので最初に結論からお伝えします。
『1年以上、借金の返済総額が減っていないor増えている。』
『このまま借金を完済するのは厳しいのは分かっているけど、利息だけ毎月支払うような状態が1年以上続いている。』
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それでは解説をしていきます。
借金を抱えたまま死んでしまったらどうなる?
借金を抱えたまま死んでしまった場合、残された親族(相続人)にどのような事態が発生するのかについて解説します。
相続は資産も債務も承継される
相続が発生すると、相続には、「被相続人の財産に属した一切の権利義務」(民法896条)を承継します。
つまり、被相続人に借金がある場合には、その借金についても相続の対象となり、相続人に承継されることになります。
住宅ローンは団信に入っていれば相続されない
被相続人が住宅ローンを返済している最中に亡くなった場合、被相続人が団体信用生命保険に入っていなかったかを確認しましょう。
団体信用生命保険とは、住宅ローンを組む際に加入することができる生命保険です。
もし債務者が死亡したり、高度な身体障害などを負ったりした場合には、団体信用生命保険により住宅ローンの全額が支払われることになります。
そのため、被相続人が団体信用生命保険に加入していた場合には、住宅ローンは完済されるため、相続人が相続する必要はないということになります。
債務を承継しない方法もある(限定承認、相続放棄)
被相続人の借金が多額に及んでいる場合などには、相続人は借金の全部または一部を承継しない選択をすることができます。
借金を相続しない方法としては、「限定承認」と「相続放棄」の2つがあります。
限定承認とは、相続で承継する財産がある場合に、その財産の限度でのみ債務を承継するという意思表示を言います(民法922条)。
つまり、限定承認をすれば、相続によって承継する財産と借金のトータルがマイナスになることはないということになります。
相続放棄とは、その名のとおり、被相続人の権利・義務を一切承継しないという意思表示です(民法939条)。
つまり、相続放棄をすれば、被相続人の借金を返済する必要は一切なくなります。
残された家族にとって債務をすべて把握するのは大変
限定承認や相続放棄の方法があるとはいえ、残される相続人にとっては、被相続人の債務状況を正確に把握していなければ正しく意思表示をすることができません。
しかし、被相続人が相続人と十分にコミュニケーションを取っていないと、こうした把握は非常に困難です。
ぜひ被相続人となる人が生きているうちに、被相続人と相続人との間で借金の状況について相談する機会を持つようにしてください。
限定承認と相続放棄を行う際の注意点とは?
上記のとおり、限定承認や相続放棄をすれば、相続により承継する資産がマイナスになることはないので、一見メリットだらけに見えます。
しかし、限定承認と相続放棄を行う場合には注意しなければならないことがあります。それぞれ以下で解説します。
限定承認の注意点
限定承認をした場合、相続により承継する資産の限度では債務を承継することになります。
仮に承継する資産をすぐには処分できない場合、債務の支払いのために別途返済原資を準備する必要があるという点に注意が必要です。
また、限定承認は家庭裁判所に申述する方法により行う必要があり、比較的複雑な手続きが必要になります。
そのため、弁護士などの専門家の助言を得ながら行う必要があるでしょう。
相続放棄の注意点
相続放棄をした場合、その時点で相続人は被相続人の財産を承継する資格を失います。
したがって、後から被相続人に財産があることが判明した場合でも、その財産を承継することはできない点に注意が必要です。
生前に債務整理をして、家族の負担を軽減しましょう
借金を残したまま亡くなってしまうと、家族に多大なる迷惑をかけてしまいます。
したがって、借金をしている方は、生前に債務整理を行い、借金の返済負担を減らすことを検討しましょう。
債務整理とは、債権者との交渉や裁判所を通じた手続きによって、借金の返済負担を軽減することを言います。
債務整理を行うことで、借金の金額を減らしたり、返済スケジュールに余裕を持たせたりすることができます。
債務整理は、
- 任意整理
- 個人再生
- 破産
の3つの方法に大きく分類されます。
生前に債務整理を行う場合の、それぞれの手続きが持つメリットとデメリットについて、詳しく解説します。
任意整理とは?
任意整理とは、裁判所を関与させることなく、債務者と債権者が借金の返済負担軽減について個別に話し合って決める方法です。
その結果、債務の減免や返済猶予について合意できれば、借金の返済負担を軽減することができます。
任意整理を行う際には、債権者との交渉が発生するため、経験豊富な弁護士や司法書士に依頼をするのがおすすめです。
新たな返済条件が合意された場合、以降はその合意内容に基づいて、債務者は引き続き借金を返済していくことになります。
生前に任意整理をするメリット
生前に任意整理をするメリットは以下のとおりです。
- 手続きが比較的簡単
裁判所が関与する手続きでは、提出しなければならない書類がたくさんあるなど、形式的な作業に多くの手間がかかります。
しかし、任意整理には裁判所が関与しないため書類の提出等が不要であり、事務的な負担が小さくなります。
裁判所に提出するための複雑な書類などを準備する必要もないため、弁護士や司法書士への依頼費用も比較的安く抑えられる傾向にあります。
- 合意内容を柔軟に決められる
裁判所が関与する手続きでは、法律の規定に従った債務整理が行われます。
一方、任意整理においては、債権者と債務者の間で、その後の返済内容について、自由に決めることができます。
当事者の話し合いによって柔軟な解決方法を模索することができるというのが、任意整理の大きなメリットの一つです。
- 手元に資産を残しておくことができる
法的整理手続においては、債務者の資産については、一部を除きすべて処分されてしまうことが原則となります。
そのため、残しておきたい資産があったとしても、原則として手元に残しておくことができません。
これに対して、任意整理の場合には、資産を手元に残したまま債務整理を行うことが可能であるというメリットがあります。
特に、相続人に残しておきたい財産がある場合には、任意整理が有効な方法となるでしょう。
- 当事者間のみで内々に解決できる
任意整理においては、原則として第三者に任意整理を行った事実が知られることもありません。
そのため、親族など借金の事実を秘密にしている場合、任意整理を行うことがおすすめです。
但し、信用情報機関に任意整理の事実が登録され、借入が5年間程度制限されるということに注意が必要です。
生前に任意整理をする際の注意点
一方、生前に任意整理をする際に注意すべきことは以下のとおりです。
- 債権者の同意が必要
任意整理を行う場合、あくまでも当事者間での話し合いによって債務負担の軽減を合意することになります。
そのため、債権者から新たな返済条件についての同意が得られなければ、債務負担の軽減は実現しません。
特に借金が多額に及んでいる場合などには、希望条件が互いに大きく離れてしまい、新たな返済条件の合意に至ることが困難なことが多いと言えます。
任意整理について債権者の同意が得られない場合には、他の手続の利用を検討する必要があります。
- 債権者が複数の場合は個別の交渉が必要
任意整理は、新たな返済条件について合意してくれた債権者との間でのみ成立します。
つまり、債権者が複数の場合には、各債権者と個別の交渉が必要ですので、その分手間がかかってしまいます。
また、返済条件に同意してくれるかどうかについては、債権者によって判断が異なります。
そのため、ある債権者との間では任意整理が成立しても、他の債権者との間では成立しないということも考えられます。
たとえば、相続人に残してあげられる資産はあまりないけれど、借金だけはできるだけ減らしておきたい・・・という場合には、他の手続を利用する方が良いでしょう。
個人再生とは?
個人再生とは、民事再生法に基づき、裁判所における個人再生手続を通じて、債権者の多数決により債務の返済負担の軽減を取り決める方法です。
個人再生を行う際は、債務者が裁判所に対して個人再生手続開始の申立てを行います。
申立ての際には、個人再生が経験豊富な弁護士や司法書士に書類の作成や代理人への就任を依頼するのがおすすめです。
生前に個人再生をするメリット
生前に個人再生をするメリットは以下のとおりです。
- 一括での債務の整理が可能
個人再生手続においては、全債権者との間で一括して、債務の減免・支払猶予などの返済負担の軽減が行われます。
そのため、複数の債権者がいる場合であっても、各債権者との個別の交渉をする必要がありません。
また、個人再生手続においては、一部の債権者が再生計画に同意しない場合であっても手続きを進めることができます。
再生計画案に対して異議を述べた債権者が頭数で半数未満、かつ債権額で半分以下であれば、同意しない債権者との間でも債務の返済負担を軽減することが可能です。
- かなりの割合で債務が減額される
個人再生手続によれば、債務の総額にもよりますが、通常は大きく債務の金額を圧縮することができます。
任意整理では、過払い金があるケースを除けば債務の減額は認められにくいことを考えると、個人再生による債務減額のメリットは大きいと言えます。
- 住宅や車などを手元に残しておける場合がある
先にも説明したように、法的整理手続においては、原則として債務者の資産はすべて処分され、債権者に分配されてしまいます。
しかし、個人再生では、住宅や車などの資産を手元に残しておくことが認められる場合があります。
よって、マイホームを相続人に残してやりたいと考える場合には、個人再生手続を利用するメリットがあると言えます。
- 強制執行が停止する
個人再生手続開始の決定がなされると、債権者から債務者への強制執行が停止します。
また、開始決定前であっても、裁判所の裁量により強制執行禁止の命令が出される場合があります。
もし債権者からの厳しい取り立てに遭っているという場合には、日常生活に平穏を取り戻すことができるので、大きなメリットでしょう。
生前に個人再生をする際の注意点
一方で、生前に個人再生をする際に注意すべきことは以下のとおりです。
- 借金が全額免除されるわけではない
個人再生では、破産の場合とは異なり、債務の全額が免除されるわけではありません。
どのくらいの債務が残るかは、債務の総額により決定されます。
平均すると、おおむね5分の1以上は債務が残ってしまうことになります。
相続人にマイホームなどを残したい場合は別として、そうでなければ、破産の方が有利な解決を得られることが多いです。
- 将来反復継続して収入を得る見込みがある場合のみ利用可能
個人再生手続開始の要件として、「将来において継続的に又は反復して収入を得る見込み」があることが必要です。
したがって、安定した収入が見込めない場合には、個人再生の手続きを利用することはできません。
ある程度以上の金額の年金収入などが定期的に入ってきていれば、この点はクリアできます。
しかし、そうした安定収入がない場合には、破産手続の利用を検討することになります。
- 住所・氏名が官報に掲載される
個人再生手続が開始した場合、官報(国発行の機関紙)に氏名と住所が掲載されます。
国の公的な発行紙に名前が載ってしまいますので、債務整理を行った事実が第三者に知れてしまう可能性があります。
実際には官報を日常的にチェックしているという人はほとんどいませんが、親族などに借金を秘密にしている場合には念のため注意が必要です。
破産とは?
破産とは、破産法という法律に基づき、裁判所が関与する法的な手続きに則って、主に債務の全額免除により債務者を返済の負担から解放する制度です。
債務の全額免除が認められるのは破産手続のみです。
したがって、最も強力な債務整理手続と言えるでしょう。
生前に破産をするメリット
生前に破産をするメリットは、以下のとおりです。
- 原則として債務の全額が免責される
任意整理や個人再生では、債務の全部が免除されることはありませんので、引き続き債務を支払っていくことになります。
一方、破産手続においては、原則として債務の全額が免責されます。
借金が多額に及んでしまっている場合や、特に相続人に残すべき財産がないという場合には、破産手続の利用が第一の候補となるでしょう。
但し、税金を納める債務や、浪費による債務などは、例外として免責されないことに注意が必要です。
- 強制執行が停止する
破産手続においても、個人再生手続と同様に、破産手続開始決定後はすべての強制執行が禁止されます。
また、破産手続開始の申立ての段階においても、裁判所の裁量で強制執行禁止の命令が出る場合があります。
よって、破産手続には日常の取り立てから解放されるというメリットがあります。
生前に破産をする際の注意点
一方で、生前に破産をする際に注意すべきことは以下のとおりです。
- ごく一部を除いて資産がすべて処分される
破産手続においては、一部の例外を除き、債務者の所有する資産はすべて売却されて債権者に対して分配されます。
したがって、マイホームなどを相続人に残しておきたいと考える場合などには、任意整理または個人再生手続を利用することを検討しなければなりません。
- 住所・氏名が官報に掲載される
個人再生の場合と同様、破産手続が開始した場合、官報(国発行の機関紙)に氏名と住所が掲載されます。
したがって、家族に借金を秘密にしている場合などは、念のため、家族が官報を見て破産手続開始の事実を知ってしまうかもしれないということに留意しましょう。
- 破産手続期間中は一定の職業に就けなくなる
破産手続が開始すると、債務者は一定の資格職や警備員などの職種に就くことができなくなります。
これを破産者の「資格制限」と言います。
もし、破産前にこれらの職業に就いていた場合、破産手続きが開始してしまうと、職を失うことになってしまいますので、十分に注意しましょう。
なお、資格制限は破産手続における免責決定後に解除されます。
自宅だけは子供に残したい。どの債務整理手続きを利用すべき?
相続を考えたときに、「マイホームだけは子供に残してあげたい」と考える人は多いのではないでしょうか。
マイホームを残したまま債務整理をしたいという場合に、どの債務整理手続きを利用すれば良いかということについてまとめます。
まず、破産手続においてはマイホームを処分されてしまうのでNGです。
もちろん、債務の返済がどうしてもできないなどの場合には、破産手続を行わざるを得ない場合もあります。
しかし、マイホームを残したいのならば、できる限り他の手続を利用することを検討すべきでしょう。
任意整理か個人再生であれば、マイホームを残しておける可能性があります。
基本的には、債権者の数が少なく、多少返済スケジュールを猶予してもらえれば完済の見込みがあるという場合は、任意整理を利用することもあり得るでしょう。
しかし、債権者の数が多い、債務が多額である、住宅ローンを滞納しているなどの場合には、より強力な手続きである個人再生手続を利用するのがおすすめです。
また、いつ健康を害して債務の返済を続けられなくなるかわからないという心配がある場合には、できるだけ債務の金額を減らせるよう、やはり個人再生手続を利用する方が大きなメリットを得られます。
生前の債務整理は弁護士や司法書士に相談しよう
生前の債務整理を検討する際には、債務整理に強い弁護士または司法書士に相談しましょう。
債務整理を行うには、債権者との交渉や、裁判所に提出する書類の準備などを行う必要があります。
しかし、これらの準備を行うには専門的知識を必要とし、また作業量も多いため、一般の方が一人で行うことは現実的ではありません。
弁護士や司法書士に相談・依頼をすれば、依頼者の具体的な事情に応じて、どの債務整理手続きを選択すべきかなどについてのアドバイスを受けることができます。
また、面倒な債権者との交渉や、書類の準備もすべて代わりに行ってくれます。
よって、生前の債務整理を検討する場合には、早めに弁護士や司法書士に相談しましょう。
依頼費用が払えない場合、法テラスを活用しよう
もし、手元に弁護士や司法書士に支払う依頼費用がないという場合には、「法テラス」に相談してみましょう。
法テラスでは、経済的に困窮している依頼者に対して、弁護士や司法書士への依頼費用を立て替えてくれます。
立て替えてもらった費用は、依頼終了後に分割払いで返済していくことになりますが、一定の場合には返済の免除を受けられます。
また、法テラスでは弁護士や司法書士を紹介してもらうこともできます。
そのため、弁護士や司法書士へのツテがないという場合にも安心です。
債務整理をしてみようと考えた方は、まず法テラスで相談をしてみてはいかがでしょうか。
相続に備えて債務整理で借金を減らした人の体験談を紹介
相続を見据えて、債務整理で借金を減らした人の体験談を一つ紹介します。
私は今年で75歳になるのですが、最近体の不調が目立つようになってきました。
まだまだ元気・・・とは思うものの、万が一私にもしものことがあった場合、子供たちに借金を残してしまうことになるということがずっと気になっていました。 私は老後の資産運用に失敗して、株で500万円ほどの借金を作ってしまいました。少しずつ返済していますが、まだ400万円ほど残っていました。 また、マイホームを55歳の時に購入したのですが、住宅ローンの支払いもまだ残っています。滞納はまだしていませんでしたが、株の借金と合わせると返済負担はかなり重いという状況でした。 収入は年金が中心ですが、最近は生活もギリギリで、借金の返済を滞納することも増えていました。 子どもたちに借金を残したくないと考えた私は、法テラスに借金の相談に行きました。 法テラスでは、債務整理に強い弁護士を紹介してもらえました。 弁護士の方には、借金を作ってしまった経緯や、現在の状況、マイホームを残したいという希望などについて話を聞いてもらいました。 弁護士の方は、マイホームを残したいのであれば、個人再生手続を利用するのが良いと提案してくれました。 そして、個人再生手続によれば、借金の負担を減らしつつ、マイホームを手元に残しておける可能性があるということを教えてくれました。 それを聞いて、私は迷わず弁護士の方に個人再生手続を進めてもらうように依頼しました。 個人再生手続では、株で作ってしまった400万円の借金は100万円にまで減らすことができました。 また、住宅ローンの支払いはこのまま続けていくことになったのですが、マイホームはちゃんと手元に残しておけることになりました。 その後は、株の借金が減ったために返済負担も軽くなり、住宅ローンも何とか支払い続けることができています。 このまま住宅ローンを完済して、子どもたちにマイホームを残してあげたいと思います。 |
まとめ
生前に借金について適切に対処することは、残される相続人のための身辺整理の一環として非常に大切です。
もし借金があって、相続人に迷惑をかけたくないと考える場合には、ぜひ一度弁護士や司法書士に相談してみましょう。
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でしが、借金問題は後回しにすればするだけ事態は悪化するだけで良い事は一つもありません。
借金問題は、専門家に相談することで思っているよりも簡単に問題を解決し新しい生活を送ることができます。
実際に、借金問題を解決した多くの人が『こんなに簡単に終わるならもっと早く相談しておけば良かった』と言います。
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