債務整理には,任意整理,個人再生,自己破産などいくつかの種類があります。
その中の1つが,特定調停です。
特定調停は,利用される数はあまり多くなく,他の債務整理よりも特に内容が知られていない債務整理かと思います。
利用を検討する場合には,特徴やメリット・デメリットを把握する必要がありますので,この記事では,特定調停について,詳しく説明していきます。
また、大切なことなので最初に結論からお伝えします。
『1年以上、借金の返済総額が減っていないor増えている。』
『このまま借金を完済するのは厳しいのは分かっているけど、利息だけ毎月支払うような状態が1年以上続いている。』
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それでは解説をしていきます。
特定調停とは
概要
特定調停とは,借金の返済ができなくなるおそれのある債務者(これを「特定債務者」といいます。)が,簡易裁判所に申し立てて,調停委員を通して債権者と借金の総額や返済方法などについて話し合い,生活や事業の建て直しを図るための手続です。
特定調停は,法人でも個人でも利用可能です。
特定調停を申し立てると,裁判所が,調停(話合い)の期日を指定します。
期日においては,まず,調停委員が,申し立てた人から,生活や事業の状況,これからの返済方法などについての事情を聴きます。
そのうえで,相手方である債権者らの意見などを聴いて,残っている借金を今後どのようにして支払っていくかについて,お互いの意見を調整していき,合意ができるようにまとめていきます。
手続きの流れ
手続きの流れは,各裁判所によって少しずつ違いますが,だいたい,次のような流れで進むことが多いです。
申立から手続き終了までの期間はおよそ2カ月程度はかかります。
(1)申立書類等を準備して,簡易裁判所に特定調停を申し立てる
(2)裁判所から債権者に対する通知,取立禁止の効果
(3)第一回調停期日の呼び出し状が届く
(4)第一回調停期日
(5)第二回調停期日
(6)調停成立(相手方が出頭していないときは合意した内容の特定調停に代わる決定がなされます。)
※合意ができない場合は,調停不成立となって終了します。
(7)調停の内容に沿って返済を始める
特定調停の特徴4つ
特定調停の特徴1 裁判所を通す手続きである
特定調停と似た債務整理の手続きである任意整理との大きな違いです。
任意整理は,裁判所を通すことなく,直接債権者らと交渉する手続きです。
裁判所を通す手続きであることによって,任意整理とは異なるメリット・デメリットが生じることになります。
特定調停の特徴2 直接の取立てが停止される
特定調停の申し立てを受理した裁判所から,それぞれの債権者に対して特定調停を開始する旨の通知(特定調停開始通知)が送付されると,債権者からの取り立て行為は,原則停止します。
債権者が通知を受け取った後も取り立てを行うことは,罰則の対象となっています。
特定調停の特徴3 強制執行が停止される場合がある
特定調停の大きな特徴として,既に行われている強制執行手続が停止できることがあります。
債権者に給料を差押えられているような場合です。
この効果を得るためには,特定調停の申し立てとは別に,“民事執行停止の申立て”を行う必要があります。
特定調停と似た手続きである任意整理は,裁判所を介する手続きではありませんので,強制施行を停止するような効果はありません。
そのため,この点が,任意整理と異なる特定調停のメリットであるといえます。
特定調停の特徴4 自分で行うことが多い
特定調停は,あまり法律知識を有しない当事者でも,裁判所でもらえる申立書などのひな型を使って,自分で申立てを行い,手続を進めていくことが可能な手続きです。
そもそも,弁護士などではなく当事者本人が出頭するのが原則とされています。
特定調停は,任意整理とは違い,裁判所を介する手続きですので,調停委員が間に入って話し合いを進めてくれます。
そのため,複数ある債務整理の中で,一番,弁護士などの専門家に依頼することなく進めることの多い手続きであるといえます。
特定調停のメリット
手続き費用が安い
特定調停を申し立てるには,裁判所に収入印紙と連絡用の郵便切手を納める必要があります。
収入印紙の金額は,おおむね,債権者1社に対して500円ずつ,郵便切手については,各裁判所によって異なりますが,債権者1社につき数百円程度のことが多いでしょう。
また,前述のように,弁護士などの専門家に依頼することなく進めることが多いので,弁護士費用などが不要です。
そのため,特定調停の手続きを進めるための費用は,比較的安くすむといえます。
強制執行を止めることができる場合がある
先ほどの説明のように,特定調停には,任意整理とは違い,強制執行を止める効果があります。
すでにお給料の差押えを受けるなどして困っている場合には,この点は大きなメリットになります。
財産を手放さなくてよい
自己破産の場合,自分の財産を借金の返済に回すことを条件として借金を免除してもらいますので,価値のある財産は手放すことになります。
また,個人再生の場合,対象とする借金を選択することができません(住宅ローン特則を利用した場合の住宅ローンは別です。)ので,自動車ローンなどが残っている場合,自動車を手放す必要が出てくるなどの問題があります。
しかし,特定調停は債権者一人一人を,別々に相手にして申立てをすることができ,どの債権者について特定調停を申し立てるかは自由なのです。
つまり,特定調停をしたくない債権者は除いて申立てをすることが可能なので,例えば,自動車ローンの債権者については申し立てないという選択をすれば,自動車を引き上げられることを防ぐことができます。
借金の理由に問題があっても手続きができる
自己破産の場合,借金を免除してもらう(免責許可の決定を得る)ためには,審査があり,借金の理由がギャンブルや浪費である場合には問題となることもあります。
しかし,特定調停の場合には,借金の理由によって効果が得られないというようなことはありません。
資格制限がない
自己破産をすると,弁護士,公認会計士,税理士,司法書士,会社の取締役,警備員など一部の資格・職業について,一定期間(通常数カ月の間)の制限があります。
特定調停の場合には,このような制限は全くありません。
特定調停のデメリット
過払い金返還請求は別に行わなければならない
特定調停においては,過払い金が発生していることが明らかになったとしても,その請求をすることができません。
引き直し計算の結果,借金が0であることを確認できるだけなのです。
過払い金返還請求をするためには,別途,交渉や裁判を行う必要がでてきます。
その場合には,特定調停をせっかく行ったにもかかわらず,弁護士に依頼して過払い金返還請求をすることになってしまうケースもあります。
なお,過払い金が発生している場合に,債権者との間で,“債権債務なし”という内容の合意をしてしまうと,その後の過払い金返還請求が認められなくなることがありますので,注意が必要です。
過払い金の発生が明らかになったら,速やかに弁護士に相談することをおすすめします。
取立てが止まるまでに時間がかかることがある
任意整理の場合,弁護士に任意整理を依頼し,弁護士が債権者らに受任通知を送付すると,その時点で債権者からの取立ては原則止まります。
ですが,特定調停の場合は,先ほどの説明のように,裁判所が特定調停の申立てを受理し,債権者に通知を送付して初めて取立てが止まることになっていますので,特定調停を申し立てるための準備を行っている間は,取立てが止まりません。
債務整理を行う場合,債権者の取立てに困っているという人も多いと思います。
取立てを直ちに止めたいのであれば,自分で特定調停を申し立てるよりも,弁護士に依頼して債務整理を進めることを選択した方がよいかもしれません。
借金が大幅に減るわけではない
自己破産では,借金が0になるという効果がありますし,個人再生でも,おおむね5分の1程度に借金が減額されます。
一方,特定調停は,同じく裁判所を介する手続きではありますが,借金が大幅に減ることはありません。
元本を減らしてもらえることはなく,将来利息のカットと,利息制限法の利息で引き直して計算することによって減額される可能性があるという程度なのです。
ですから,借金の負担がかなり大きくなっている場合には,特定調停の手続きでは解決には不足するということがあります。
ブラックリストにのる
“ブラックリストにのる“とは,信用情報機関が保有する信用情報に借金に関するネガティブな情報である事故情報がのることを意味します。
金融機関は,借入の申込みなどを受けた際に,個人信用情報を確認しますので,ブラックリストにのると,新たな借り入れの審査に通ることが極めて難しくなります。
つまり,ブラックリストにのっている間の数年間は,新たな借り入れができなくなるのです。
他の債務整理の場合もそうですが,特定調停の場合にも,ブラック情報が登録されることになります。
調停調書が作成される
特定調停において,合意が成立すると,その合意した内容をまとめた「調停調書」という書類が作成されることになります。
調停調書には,裁判による判決と同じような,強い効力が認められています。
すなわち,もし,調停調書の内容通りの返済ができなかった場合には,債権者は,裁判を起こすなどをすることなく,すぐにお給料の差押えなどの強制執行手続きを行うことができるのです。
任意整理の場合にこのような書面が作成されることはありませんので,任意整理終了後に返済が滞ったとしても,直ちに強制執行されるなどのリスクはありません。
そのため,この点は,任意整理にはない特定調停のデメリットであるといえるでしょう。
返済を続けなければならない
自己破産の場合は,借金をすべて免除してもらいますので,手続き完了後は,返済の負担はなくなります。
しかし,特定調停の場合には,月々の負担額が減るとは思いますが,債務の支払い自体は継続しなければなりません。
債権者の同意がなければ不成功となる
特定調停は,あくまでも話し合いによる合意を目指す手続きで,強制力はありませんので,合意ができないケースもあり得ます。
その場合には,調停不成立として終了せざるをえません。
そうすると,特定調停を申し立てたことが無駄になりますし,借金問題の解決もできないことになるのです。
自分で手続きを行うのは大変
特定調停は,自分で行う場合がほとんどだと説明しました。
ただ,特定調停を申し立てるには,様々な資料を準備する必要があり,専門家でない人が行うのは大変な作業です。
また,当事者が出席しなければならない特定調停の調停期日は,平日の昼間に行われますので,仕事などに支障が出ることもあります。
まとめ
このように,特定調停には,弁護士に依頼しなくてもよいなどのメリットがありますが,デメリットも少なからず存在します。
特に,特定調停を申し立てただけでは借金の問題が解決しないというケースがあり得ますので,どの手続きを選択するかは慎重に検討した方がよいでしょう。
弁護士に正式に依頼するかどうかは別として,まずは,自分の現状を弁護士に相談して,そのうえで方針を決めるのもひとつです。
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でしが、借金問題は後回しにすればするだけ事態は悪化するだけで良い事は一つもありません。
借金問題は、専門家に相談することで思っているよりも簡単に問題を解決し新しい生活を送ることができます。
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