債務整理をすると取り立ては止まる?厳しい督促を止める受任通知とは

債務整理の利用を検討している人の中には,すでに借金の返済が遅れるなどして,債権者らからの取立てが頻繁で悩んでいる人も多いかもしれません。

債務整理を行う目的は,もちろん,借金を減らしたりゼロにしたりして,生活を立て直すことにあるのですが,弁護士などの専門家に依頼して債務整理に着手することによって,取立て行為がストップするというのも,大きなメリットの1つです。

また、大切なことなので最初に結論からお伝えします。

『1年以上、借金の返済総額が減っていないor増えている。』

『このまま借金を完済するのは厳しいのは分かっているけど、利息だけ毎月支払うような状態が1年以上続いている。』

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それでは解説をしていきます。

受任通知とは

受任通知の基本

「受任通知」とは,債務整理の依頼を受けた弁護士などの専門家が,債務整理の依頼を受けたことを債権者に通知する内容の書面(手紙)のことをいいます。

介入通知などと呼ばれることもあります。

通常,受任通知の中で,債権者に対し,取引履歴の開示も求めます。

取引履歴が開示されることによって,利息制限法での引き直し計算をすることができます。

具体的に,通常受任通知に記載する事項は,次のようなものです。

・弁護士(司法書士)が,債務者依頼を受けて債務整理を受任した旨の記載

・債務者の氏名,生年月日,住所など,債務者と債務を特定するための事項

・これ以降,債務者本人への連絡はせず,全ての連絡を弁護士(司法書士)にしてもらうように求める記述

・取引履歴の開示を請求する内容

・当該受任通知が,債務の承認に当たらないことを明らかにする記述(受任通知が,債務があることを認めたものとみなされて,消滅時効を中断する効果を持ってしまうことを避けるための記載です。)

債務整理には,任意整理,個人再生,自己破産などいくつかの種類がありますが,弁護士や司法書士が債務整理を受任した場合には,どの手続きをとる場合にも,共通の手順として,まず初めにこの受任通知を債権者に宛てて送付します。

受任通知送付の条件

受任通知が送付されるのは,弁護士や司法書士が債務整理の事件を“受任”してからです。

弁護士に債務整理を依頼する場合,まずは,法律相談で弁護士に事情を説明する必要があります。

法律相談は,市役所や弁護士会などの法律相談を予約することも考えられますし,インターネットなどで弁護士を探して連絡をしてみるのでもよいでしょう。

いずれにしても,まず弁護士と面談をする必要があります。

弁護士との相談の結果,債務整理を行った方がよいケースであるということになれば,正式に債務整理を弁護士に依頼します。

多くの場合は,弁護士費用の金額などについての合意ができると,弁護士との間で委任契約書が作成され,着手金の支払い方法などについて説明があります。

これで,弁護士への正式な依頼は完了し,受任通知が送付できる状態になりますが,着手金の支払いを済ませてからしか受任通知を発送しないなど,様々な決まりを持っている弁護士(法律事務所)もありますので,きちんと確認しましょう。

効果

受任通知の一番の効果は,通知を受領した債権者からの取立てが停止することです。

このときから,債務整理の準備を進め,手続きが完了するまでの間,一時的にではありますが,借金の返済をしなくて良くなくなります。

ですから,その間に浮いたお金を裁判所に納める費用のために積み立てたり,弁護士費用にあてたりなどをすることができるのです。

取立てがストップすると,平穏な生活を取り戻すことができます。

債権者からの取立てに悩んでいる場合には,この効果は絶大です。

法的根拠

それでは,受任通知の送付によって,直接の取立て行為が止まるのはなぜか,法的根拠をご紹介します。

・貸金業法上の根拠

貸金業法21条1項は,一定の類型の取り立て行為を禁止しています。

例えば,早朝や深夜の電話などを禁止したり,債務者の勤務先に対する取立てを禁止したりしているのです。

そして,同条項の9号では,債務者が弁護士や司法書士に債務の処理を委託し,弁護士などからその旨の通知(受任通知の送付)があった場合には,債務者に対して,電話,電報,FAX,訪問のどの方法によっても,弁済することを要求することを禁止しています。

そして,貸金業法47条の3第3号では,同法21条1項9号の規定に違反したて直接の取立て行為を行った場合には,2年以下の懲役,300万円以下の罰金,あるいは,その両方の刑罰を科すものと定めています。

さらに,直接の取立て行為は,行政処分の対象にもなります。

・サービサー法(債権管理回収業に関する特別措置法)上の根拠

サービサー法18条8項は,債権回収の委託を受けたサービサーに対し,債務者が弁護士や司法書士に債務の処理を委託し,弁護士などからその旨の通知があった場合には,債務者に対して,訪問,電話によって弁済することを要求することを禁止しています。

そして,この規定に違反して取り立て行為を行ったサービサーは,サービサー業の許可の取り消しなどの行政処分を受ける場合があります。

このように,貸金業法では,受任通知送付後の電話,電報,FAX,訪問による取り立て行為が,サービサー法では,受任通知送付後の電話,訪問による取り立て行為が,法律によって禁止されているのです。

サービサー法では,FAXなどによる取立てが禁止されているわけではありませんが,通常,電話や訪問以外の取立て行為も停止されます。

これらの規定に違反した場合のペナルティとして,罰則や不利益処分が用意されていますので,ほとんどの業者は,取立て禁止というルールを守っているのが実情です。

なお,貸金業法の規定は,「貸金業を営む者」に対する規制ですし,サービサー法の規定は,「債権回収会社」に対する規制です。

そのため,これらに該当しない,例えば個人の債権者などについては,取り立て行為が禁止されていませんので,注意が必要です。


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取り立てが止まらない場合

このように,ほとんどのケースで受任通知送付後の取立ては止まるのですが,まれに,取立てや連絡がある場合があります。

業者側の連絡ミスなどが原因というケースもありますし,悪質な業者であるということもあり得るかもしれません。

いずれにしても,すでに弁護士に依頼しているのですから,もし債権者から連絡があれば,弁護士を通してくださいとだけ対応し,すぐに弁護士に相談するようにしましょう。

前述のように,受任通知の受領後も取り立て行為を続けることは違法行為ですし,場合によっては刑事罰の対象にもなりますので,毅然とした態度で対応すべきです。

万が一,訪問があって帰らないなどの場合には,警察に連絡するのもひとつです。

受任通知送付のデメリット

ブラックリストにのる

“ブラックリストにのる”とは,信用情報機関が保有する個人信用情報に,事故情報(異動情報などとも呼ばれます。

借金に関するネガティブな情報のことです。)が登録される

ことをいいます。

信用情報機関によっては,弁護士が介入したことを信用情報に登録することはないということを明らかにしているところもありますが,債務整理をしたことが事故情報として登録されることを明らかにしているところもあります。

そのため,基本的には,受任通知を送付するとブラックリストにのると考えておいた方がよいでしょう。

金融機関は,貸付けの審査の際に,個人信用情報を確認しますので,ブラックリストにのると,審査を通るのが極めて困難になります。

そのため,ブラックリストにのると,のっている数年間(5年~10年)の間,新たな借り入れができなくなるということになります。

保証人への請求

受任通知が送付され,借金の返済を中止すると,保証人がついている債務の場合は,保証人の方に請求がいく可能性があります。

受任通知には,直接の取立て行為が禁止されるという効果があると説明しましたが,禁止されるのは,債務者本人に対しての取立て行為であって,保証人に対する取立てまでもが禁止されるわけではありません。

ですから,保証人がついている借金の債権者に受任通知を送付する場合には,あらかじめ保証人に話をしておく必要があります。

場合によっては,保証人自身も債務整理を行うということも考えられますので,弁護士に相談してみてください。

口座が凍結される

借金のある銀行の口座については,受任通知が送られると,凍結されることになります。

その時点で口座に残っているお金は,借金の残額と相殺されます。

また,凍結される口座は,返済に使用されているものには限りません。

受任通知を送付した銀行については,同じ名義人の口座であれば,全て凍結されるのが普通です。

銀行が凍結されると,口座からのお金の引き出しができなくなります。

入金については,凍結後もできる場合が多いのですが,例えば,お給料の入金がされても引き出すことはできません。

このように,口座を凍結されると影響がありますので,受任通知を送付する前にはあらかじめ準備が必要となります。

例えば,その銀行にあるお金を全て引き出しておく,その銀行が振込先になっているお給料などがある場合には,振込先の口座を変更しておく,また,光熱費や携帯料金の引き落とし口座になっている場合にも変更しておくなどの事前準備です。

弁護士に依頼した場合には,受任通知を送付する前に,準備しておく事項についての丁寧な説明があるのが通常ですが,わからないことや不安なことがある場合には,その都度弁護士に質問してアドバイスを受けるようにするのがよいと思います。

裁判や強制執行手続きを止める効果はない

先ほど,受任通知によって金融業者からの取立てが止まる法的根拠について説明しました。

貸金業法とサービサー法を挙げましたが,それらの法律では,債務者に対する直接の取立てを禁止するだけで,訴訟を提起して債権の回収を図ることを禁止してはいないのです。

そのため,受任通知を送って直接の取立てが止まったからといって,裁判を起こされることがないとは限りません。

そして,勝訴判決を得て,お給料などの差押えがされる可能性もないとはいえません。

また,受任通知のみでは,すでに手続きが進んでいる強制執行の手続きを止める効果もありません。

受任通知とは別に,強制執行に対処する法的手段もありますので,具体的には弁護士に相談してみるとよいでしょう。

まとめ

弁護士などに依頼して債務整理に着手すると借金の取り立てがストップする理由について,説明してきました。

債務整理のこのようなメリットを享受するためには,弁護士や司法書士などの専門家に依頼する必要があります。

なお,司法書士については,扱える金額に制限があったり,自己破産や個人再生の代理人になれないなどの制限があります。

弁護士にはそのような制限はありません。

取立てがストップし,平穏な生活を取り戻すということは,経済的な生活状況を改善させるためにもとても大事なことです。

借金問題を抱え,特に取立て行為に困っているような場合には,できるだけ早く,弁護士に相談してみることをおすすめします。

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